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非機能要求グレードとは? 情シスが押さえるべき重要性・決め方・項目例を解説

非機能要求グレードは、かつて要件定義の定番として使われていたものの、クラウド化の流れの中で一度は表舞台から姿を消した考え方です。

しかし近年、クラウドとオンプレミスの責任分界点や、運用の「ITの隙間」が問題になる場面が増え、あらためて見直されつつあります。

この記事では、非機能要求グレードの基本から、情シス視点での重要性、決め方、代表的な項目例までを、実務に活かせる形で解説します。

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目次[非表示]

  1. 1.非機能要求グレードとは
  2. 2.情シスにとって非機能要求が重要な理由
  3. 3.非機能要求グレードによるメリット
  4. 4.非機能要求グレードの決め方
    1. 4.1.①システムの前提条件を揃える
    2. 4.2.②業務影響を整理する
    3. 4.3.③“理想”ではなく“必要十分”で決める
    4. 4.4.④運用・復旧まで含めて“実現できるか”確認する
  5. 5.非機能要求グレードの代表的な項目例
    1. 5.1.可用性
    2. 5.2.性能・拡張性
    3. 5.3.運用・保守性
    4. 5.4.移行性
    5. 5.5.セキュリティ
    6. 5.6.システム環境・エコロジー
  6. 6.まとめ

非機能要求グレードとは

非機能要求グレードは、性能や可用性、運用、セキュリティといった「機能以外の要求」を、段階的なレベルとして整理する考え方です。非機能要求グレードは「どこまで求めるのか」を関係者間で合意しやすくするための共通言語と言えます。

非機能要求は、システム要件定義の中でも抽象的になりやすい領域です。「速くしたい」「止まらないようにしたい」といった表現だけでは、人によって受け取り方が異なり、後工程での認識ズレにつながります。そこで、要求レベルをグレードとして段階化することで、必要な水準を現実的に議論できるようになります。

例えば、可用性について「ほぼ止められない」と言う代わりに、稼働時間や復旧目標時間を段階的に定義します。これにより、過剰な要求や逆に不足した要求を避けやすくなります。

情シスにとって非機能要求が重要な理由

情シスにとって非機能要求は、システム導入後の負担を左右する重要な要素です。非機能要求が曖昧なまま進むほど、リリース後のトラブル対応が情シスに集中しやすくなります。

何故なら、非機能要求の多くが運用段階で顕在化するためです。性能不足による遅延、障害時の復旧手順不備、監視不足による検知遅れなどは、機能テストでは見えにくい問題です。これらは結果として、情シスが現場対応に追われる原因になります。

例えば、監視やバックアップの要件を明確に決めていない場合、障害発生時に「想定外」として対応が後手に回ります。また、機能要件だけでベンダーと合意してしまうと、運用設計やセキュリティ対策が追加費用として後から発生するケースも少なくありません。

非機能要求は「後から考えるもの」ではなく、情シスの負担を抑えるために最初に整理すべき要件です。

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非機能要求グレードによるメリット

非機能要求グレードを使うメリットは、関係者間の認識ズレを防ぎやすくなる点です。グレード化は合意形成と投資判断を同時に助ける仕組みと言えます。

要求を段階的に整理することで、「全部必要」「全部不要」といった極端な議論を避けられます。現場、経営層、ベンダーの立場はそれぞれ異なりますが、グレードを使えば同じ土俵で議論できます。

可用性やセキュリティをすべて最高レベルにすると、コストや運用負荷が一気に跳ね上がります。しかし、業務影響が限定的なシステムまで高グレードにする必要はありません。

グレードを使えば、重要度に応じて優先順位をつけた判断が可能になります。結果として、導入後の手戻りや追加対応が減り、情シスにとっても持続可能な運用設計につながります。

非機能要求グレードの決め方

非機能要求グレードは、感覚ではなく段階的な整理で決めることが重要です。

ここでは、IPAの考え方をベースに、実務で使いやすい決め方を解説します。

①システムの前提条件を揃える

前提条件が揃っていなければグレードは決められません。利用規模や運用体制が異なれば、必要な非機能要求も大きく変わるためです。

まず、利用人数、アクセス増加の見込み、外部システムとの連携有無、情シスの運用体制などを整理します。

これらが曖昧なままだと、「想定外の負荷」や「運用できない要件」が後から発生します。そのため、対象システムの姿を固めてからグレード検討に入ることが重要です。

②業務影響を整理する

次に、業務影響を基準に非機能要求を考えます。

「止まったら困る時間」を明確にすると、優先すべき要求が見えます。すべてのシステムが同じ重要度ではないため、何分、何時間止まると業務や顧客に影響が出るのかを整理する必要があります。

ピーク時間帯に止まると売上につながるシステムと、社内参照用のシステムでは求められる可用性が異なります。この整理を行うことで、重要項目に絞ったグレード設定が可能になります。結果として、過不足のない非機能要求につながります。

③“理想”ではなく“必要十分”で決める

非機能要求は、理想を追いすぎないことが重要です。重要な項目から優先して決める姿勢が求められます。すべてを高グレードにすると、コストと運用負荷が現実的でなくなるためです。非機能要求は「守り」の要件である一方、過剰になりやすい側面があります。

例えば、決済や認証といった業務中核は高グレードに設定し、社内向けの参照系システムは、必要最低限に抑える判断も合理的です。結果として、現実的な投資判断と運用設計が可能になります。

④運用・復旧まで含めて“実現できるか”確認する

最後に、運用面で実現可能かを確認します。要件としては成立していても、情シスの体制で回せなければ形骸化してしまいます。

監視、障害対応、バックアップ復旧などを実際に誰が担うのかを確認します。例えば、高度な監視要件を設定しても、夜間対応体制がなければ実効性は低くなります。この確認を行うことで、現場に根付く非機能要求になります。

結果として、机上の空論ではないグレード設計が実現します。

非機能要求グレードの代表的な項目例

非機能要求グレードは、項目ごとに考えることで整理しやすくなります。

ここでは、実務でよく扱われる代表的な項目例を紹介します。

可用性

可用性は、システムを「どの程度止めずに利用し続ける必要があるか」を示す要求です。24時間365日稼働が必要なのか、営業時間内のみで問題ないのかといった運用形態によって、求められる水準は大きく異なります。

また、障害が発生した場合にどれくらいの時間で復旧する必要があるかや、どこまでデータの損失を許容できるかも重要な検討ポイントです。冗長化構成や切替方式とあわせて整理することで、業務影響に見合った可用性設計が可能になります。

性能・拡張性

性能・拡張性は、アクセス集中や処理量の増加などの負荷への耐性を示す要求です。ピーク時の同時接続数、レスポンス時間、、処理件数などを想定しながら、必要な性能水準を決めていきます。

将来的な利用者増加や機能追加を見据え、拡張しやすい構成とすることも重要です。クラウド環境ではスケールしやすい反面、前提を決めないとコストが膨らむ可能性があるため、性能とコストのバランスを意識した設計が求められます。

運用・保守性

運用・保守性は、システムを日常的にどのように運用し、どこまで管理するかに関する要求です。監視の検知レベル、ログの保管期間、バックアップ方式などが代表的な検討項目です。

あらかじめ運用レベルを明確にしておくことで、必要な人員や工数を見積もりやすくなり、無理のない運用体制を構築できます。

移行性

移行性は、既存システムやデータを新システムへどう移すかに関する要求です。段階的に移行するのか、一括移行とするのか、対象データ量や移行期間、検証方法を整理します。

移行手順やリスクを事前に明確にすることで、切替時のトラブルを最小限に抑えることができます。

セキュリティ

セキュリティは、「守る範囲と強度」を定義する要求です。多要素認証(MFA)の有無、通信やデータの暗号化、監査ログの取得、不正アクセス検知などを検討します。

すべてを最高水準にするのではなく、業務内容やリスクに応じて適切なレベルを設定することが現実的です。

システム環境・エコロジー

システム環境・エコロジーは、システムを設置・運用する環境に関する要求です。耐震性、消費電力、発熱量、CO2排出量などが考慮点となります。

近年は環境負荷低減への配慮も重要視されており、持続可能なシステム構成を検討する観点として位置づけられます。

まとめ

この記事では、非機能要求グレードについて以下の内容を解説しました。

  • 非機能要求グレードの概要

  • 情シスにとって非機能要求が重要な理由

  • 非機能要求グレードのメリット

  • 非機能要求グレードの決め方

  • 非機能要求グレードの代表的な項目例

非機能要求グレードは、一度は下火になりながらも、クラウド時代に再評価されている考え方です。情シスにとっては、運用負担やトラブルを減らすための実践的な武器になります。

まずは、システムの前提条件と業務影響を整理し、必要十分なグレードを設定することが重要です。非機能要求グレードをうまく活用することで、導入後に振り回されないシステム設計につながります。

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霜島 裕也
霜島 裕也
2022年にFTSへ入社。社内情シス業務アウトソーシングサービスのマーケティング兼プリセールスを担当している。最近は法務関連の事務局にも従事。IT関連資格としてPMP、ITコーディネータを保有し、現在も維持している。 入社前の1991年~2015年は総合電機メーカーにて、総務、販売企画、営業、SE、プロジェクトマネジメントなど幅広い業務を経験。

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