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プライバシーマーク(Pマーク)とは? 1名体制の管理部門でも分かる取得の流れと注意点

「取引先からプライバシーマーク(Pマーク)の取得を求められたが、何から手をつければいいのか分からない」「プライバシーマークの取得や運用の工数が割けるか不安だ」このようなお悩みを抱える情シスや管理部門の担当者は多いのではないでしょうか。

この記事では、プライバシーマークの基礎知識やISMSとの違い、具体的な取得フロー、少人数体制で運用する際の注意点について、実務的な視点で解説します。

目次[非表示]

  1. 1.プライバシーマークの基礎知識
    1. 1.1.プライバシーマーク申請の要件|1名体制の管理部門でも取得できるか?
    2. 1.2.ISMSとの違い
  2. 2.プライバシーマークの必要性
  3. 3.プライバシーマーク取得のメリット・デメリット
    1. 3.1.メリット|取引・社内体制・リスク管理への効果
    2. 3.2.デメリット|1名体制で負担になりやすいポイント
  4. 4.プライバシーマーク取得の全体スケジュール
  5. 5.1名体制で管理する際の注意点
    1. 5.1.実務と乖離した「理想的なルール」を作らない
    2. 5.2.属人化を防ぐ工夫をする
    3. 5.3.「すべて自力」にこだわらない
  6. 6.プライバシーマーク取得をスムーズに進めるには?
  7. 7.まとめ

プライバシーマークの基礎知識

プライバシーマーク制度は、日本産業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム-要求事項」に準拠した制度です。

個人情報について適切な保護措置を講じる体制を整備している事業者等を評価し、その旨を示すプライバシーマークを付与するとともに、事業活動におけるマークの使用を認めています。

企業が個人情報を適切に取り扱い、その保護のための体制(PMS:個人情報保護マネジメントシステム)を適切に整備・運用していることについて、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)などの第三者機関が審査し、認証を付与する仕組みです。

※プライバシーマークは『一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)』の登録商標です。

プライバシーマーク申請の要件|1名体制の管理部門でも取得できるか?

「管理部門の担当者が1名」であっても、会社全体の体制が要件を満たしていれば取得は可能です。ただし、申請には要件が存在するため、注意が必要です。プライバシーマークの主な申請要件は以下のとおりです。

  1. JIS Q 15001に基づくPMS(個人情報保護マネジメントシステム)を定めて運用していること

  2. PMSに基づき実施可能な体制が整備されて個人情報が適切に取扱われていること

  3. 社会保険・雇用保険に加入している正社員または登記上の役員(監査役を除く)が2名以上いること

ここで重要になるのが「3」の人数要件です。PMSを適切に運用するためには、役割の異なる以下の2つの役職を任命する必要があります。

役職

内容

個人情報保護管理者

PMSの構築・運用を
指揮する責任者

取締役、管理部長など

個人情報保護監査責任者

運用状況を公平な立場で
監査する責任者

他部門の責任者など

この2つの役職は、同一人物が兼務することができません。したがって、「代表取締役1名のみの会社」や「社員1名のみの会社」は、物理的にこの兼務禁止規定をクリアできないため、原則として申請ができません。

一方で、担当者が1名(例えば総務課長のみ)であっても、代表取締役を「個人情報保護管理者」にし、担当者を「個人情報保護監査責任者」にするといった形で、組織内に2名以上の正社員・役員がいれば体制構築は可能です。

※ただし、代表者(代表取締役)は「個人情報保護管理者」になることはできますが、「個人情報保護監査責任者」を兼任することはできません。これは、自らの経営判断を自ら監査することになり、監査の公平性および客観性を確保できなくなるためです。

ISMSとの違い

情報セキュリティに関する認証として、プライバシーマークとよく比較されるのが「ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)」です。どちらも「情報の保護」を目的としていますが、守る対象や適用範囲に違いがあります。

プライバシーマーク

ISMS(ISO 27001)

保護対象

個人情報(顧客情報、従業員情報など)

情報資産全般(個人情報、技術情報、財務情報など)

規格の基準

日本国内規格(JIS Q 15001)

国際規格(ISO/IEC 27001)
日本工業規格( JISQ27001)

取得単位

事業者単位(会社全体での取得が必須)

事業所・部門単位でも取得可能

主な目的

個人情報の適切な取り扱いと保護

組織全体の情報セキュリティ管理体制の構築

プライバシーマークは「会社全体」で取得しなければならないため、一部の部署だけで取得することはできません。一方、ISMSは「システム部のみ」「本社のみ」といった限定的な範囲での取得が可能です。

プライバシーマークの必要性

なぜ今、多くの企業が工数をかけてまでプライバシーマークを取得するのでしょうか。その背景には、社会的な信頼性の確保とビジネスチャンスの拡大があります。

個人情報の漏えい事故が後を絶たない現在、大手企業を中心に、委託先の選定基準として「プライバシーマーク取得」を条件とするケースが増えています。また、自治体や官公庁の入札参加資格において、プライバシーマークの取得が加点対象や必要条件となる場合があります。

さらに、名刺やホームページにマークを表示することで「法令を遵守し、個人情報保護に努めている信頼できる企業」というブランドイメージを、顧客や消費者に与えることができます。

プライバシーマーク取得のメリット・デメリット

1名体制の管理部門にとって、プライバシーマーク取得は大きなプロジェクトです。着手する前にメリットとデメリットを正しく理解しておく必要があります。

メリット|取引・社内体制・リスク管理への効果

プライバシーマークを取得するメリットとして、対外的な信頼向上と差別化、採用活動への好影響、社内ルールの明確化とリスク低減が挙げられます。

対外的な信頼向上と差別化という点では、競合他社が取得していない場合、プライバシーマークがあることでセキュリティ意識の高さを示すことができ、営業活動や入札で有利に働きます。また、採用活動への好影響の面では「従業員の個人情報もしっかり守る企業」という姿勢が求職者に安心感を与え、採用ブランディングの向上にもつながります。

さらに、取得プロセスでは個人情報の洗い出しやリスク分析を行うため、社内のどこにリスクがあるのかが可視化されます。ルールが整備されることで従業員のセキュリティ意識が高まり、結果として情報漏えい事故の未然防止にもつながります。

デメリット|1名体制で負担になりやすいポイント

プライバシーマーク取得のデメリットとしては、文書作成と記録管理の負担、運用の形骸化リスク、2年ごとの更新審査への対応が挙げられます。

規程や様式、記録簿など作成・管理すべき文書は多岐にわたり、1名で整備・更新を継続するのは大きな負担となりやすいです。また、審査通過を目的に実態に合わない厳しいルールを定めてしまうと、現場で守られず、運用が形骸化するおそれがあります。

さらに、プライバシーマークは2年ごとに更新審査があり、その都度、運用記録の確認や規程の見直しが求められます。担当者が退職した場合にノウハウが十分に引き継がれず、更新が難しくなる属人化のリスクにも注意が必要です。

プライバシーマーク取得の全体スケジュール

プライバシーマークの取得には、個人情報保護マネジメントシステムの構築・運用・審査など複数の工程が必要となります。

取得までの期間は、企業の規模、個人情報の取扱量などによって異なりますが、一般的には約6~12ヶ月程度かかるケースが多く見られます。以下は一般的なスケジュールの流れです。

期間目安

内容

1.調査・計画

約1ヶ月

社内でどのような個人情報を取り扱っているかを特定し(個人情報特定)、リスク分析を行う。全体のスケジュールを策定する。

2.体制構築・文書作成

約1~3ヶ月

JIS Q 15001規格に沿った内部規程(マニュアル)や様式を作成する。

3.運用(PDCA)

約2~3ヶ月

作成したルール通りに業務を行う。従業員教育や内部監査を実施し、記録を残す。※申請には一定期間の運用実績が必要です。

4.申請

1日

審査機関へ申請書類を提出する。

5.文書審査

約1~2ヶ月後

提出した規程類が規格に適合しているか審査される。不備があれば指摘事項として返される。

6.現地審査

約1ヶ月以内

審査員が来社し、実際の運用状況を確認する。代表者や従業者へのインタビューが行われる。

7.改善報告

約2週間~1ヶ月

指摘された不適合箇所について修正・改善を行い、報告書を提出する。

8.認定・付与

約1~2ヶ月

審査会での決定を経て、プライバシーマーク付与の契約を締結する。

特に「3. 運用」のフェーズでは、教育や内部監査の実績や記録が必要です。ここを飛ばして申請することはできませんので、計画的なスケジュール管理が重要です。

1名体制で管理する際の注意点

少人数の管理部門や、実質1名の担当者がプライバシーマーク取得を進める場合、以下の点に特に注意してください。

実務と乖離した「理想的なルール」を作らない

市販の雛形をそのまま使い、「入退室記録を全従業員手書きで管理する」「USBメモリは毎回申請書を書く」など、現場の実情に合わない厳しいルールを設定してしまうことがあります。

1名体制では管理の手が回らなくなるため、「ICカードログで代替する」「原則使用禁止にする」など、管理の手間を減らしつつセキュリティを保つ現実的なルールを策定することが重要です。

属人化を防ぐ工夫をする

担当者が1名の場合、その人が休職や退職をした瞬間にプライバシーマークの運用がストップするリスクがあります。個人情報管理台帳の更新方法や内部監査の手順などのマニュアルを分かりやすく整理し、誰でも一定水準で対応できる状態を整備することが重要です。

また、定期的に社長や他部署の責任者に状況を共有するなど、ブラックボックス化させない仕組みを意識してください。

「すべて自力」にこだわらない

プライバシーマークの規格であるJIS Q 15001の解釈や、規程・様式の作成には専門知識が必要です。通常業務との兼務でこれらを全て独学で行うと、残業時間の増大や、本業の遅延を招く恐れがあります。

必要に応じて外部セミナーの活用や専門家への相談、既存の信頼できるガイドラインの参照などを行い、効率的かつ適切に体制を整備することが重要です。結果として、担当者の負担軽減と制度への確実な適合につながります。

プライバシーマーク取得をスムーズに進めるには?

プライバシーマーク取得には、「自社のみで対応する」方法と「外部支援を活用する」方法があります。

自社対応の場合

費用は審査料などの実費のみで済みますが、規格の勉強、文書作成、審査対応など、担当者への負担は大きくなります。過去に取得経験がある担当者がいる場合を除き、1名体制での完全自社対応はハードルが高いのが現実です。

外部支援を活用する場合

コンサルタント会社などの外部支援を利用すれば、文書作成の代行や、自社に合ったルールの提案、審査指摘への対応サポートなどを受けられます。費用はかかりますが、担当者の工数を削減できます。

「規程の作成だけ依頼する」「内部監査だけ手伝ってもらう」といったスポットでの活用も可能なケースがあるので、リソースに合わせて検討することをお勧めします。

まとめ

この記事では、プライバシーマークについて以下の内容を解説しました。

  • プライバシーマークの基礎知識

  • プライバシーマークの必要性

  • プライバシーマーク取得のメリット・デメリット

  • プライバシーマーク取得の全体スケジュール

  • 1名体制で管理する際の注意点

  • プライバシーマーク取得をスムーズに進める方法

プライバシーマークの取得は、1名体制の管理部門にとっては楽な道のりではありません。しかし、取得によって得られる社会的信用や、社内の管理体制強化というメリットは、企業の成長にとって大きな武器となります。

重要なのは、担当者一人が抱え込まず、経営層の理解を得ながら計画的に進めることです。また、必要に応じて外部のノウハウを頼ることも選択肢の一つです。

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霜島 裕也
霜島 裕也
2022年にFTSへ入社。社内情シス業務アウトソーシングサービスのマーケティング兼プリセールスを担当している。最近は法務関連の事務局にも従事。IT関連資格としてPMP、ITコーディネータを保有し、現在も維持している。 入社前の1991年~2015年は総合電機メーカーにて、総務、販売企画、営業、SE、プロジェクトマネジメントなど幅広い業務を経験。

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