
Copilotのマクロ作成をどう活かす?Excel業務の効率化と全社展開の進め方
情報システム部門や管理部門の担当者のなかには、「各部門からExcel業務の効率化を相談されるが、マクロ(VBA)を組んであげる余裕がない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。特に専任の担当者がいない、あるいは少人数体制で運用している企業の場合、全社の細かな業務改善にまで手が回らないのが実情です。
しかし、Microsoft 365 Copilot(※)やCopilot ChatなどのAI支援機能を活用すれば、VBA(Visual Basic for Applications)のコード案を作成したり、既存コードの意味を確認したりしやすくなります。
ただし、Excel上のCopilotがマクロを自動作成・自動実行するわけではないため、生成されたコードはExcelデスクトップ版のVBA環境で確認・修正・テストすることが前提です。その結果、現場の担当者自身による業務改善の内製化を後押しできます。
この記事では、Copilotでのマクロ作成でできることや導入のメリット、活かしやすい業務、全社展開へ向けた安全な進め方について解説します。
※Microsoft 365 Copilot は、米国 Microsoft Corporation の米国およびその他の国における登録商標または商標です。
目次[非表示]
- 1.Copilotを活用したマクロ作成は何ができる?
- 2.Copilotでマクロ作成を進めるメリット
- 3.Copilotのマクロ作成を活かしやすい業務
- 3.1.Excel集計や定型レポート作成
- 3.2.データ転記やフォーマット統一
- 3.3.チェック業務や一覧更新の補助
- 3.4.問い合わせ対応用の補助ツール作成
- 4.全社展開の前に決めたいこと
- 4.1.どの業務を内製対象にするか決める
- 4.2.VBAとOffice Scriptsの使い分けを確認する
- 4.3.入力してよい情報・入力してはいけない情報を整理する
- 4.4.レビューと動作確認のルールを決める
- 4.5.マクロの保存・配布・実行ルールを決める
- 4.6.部門向けの使い方ガイドを用意する
- 5.Copilotでマクロ作成を定着させる進め方
- 6.まとめ
Copilotを活用したマクロ作成は何ができる?
まずは、Copilotを使ってどこまでマクロ作成を支援できるのかを整理します。
Copilotはマクロ作成の“補助役”として使える
Copilotは、一からすべてを自動で作ってくれる万能のシステムというよりは、マクロ作成の“補助役”として非常に優秀です。たとえばCopilot Chatなどに「このシートのA列からC列までを並び替えて、空白行を削除するVBAコード案を作って」のように指示することで、ベースとなるコード案を得られる場合があります。
実際に使う際は、処理対象の範囲やファイル構成に合っているかを確認し、テスト用ファイルで動作検証することが必要です。また、エラーが出た際に解決策を質問したり、既存のコードがどのような処理を行っているか解説してもらったりすることも可能です。
業務改善の内製が可能
これまでExcelのマクロ作成は、プログラミング知識のある一部の担当者や、外部のシステム会社に頼らざるを得ないケースが少なくありませんでした。しかしCopilotを活用することで、VBAの文法を熟知していない現場の担当者でも、コード案をもとに定型処理の自動化を検討しやすくなります。
ただし、実務で利用するマクロは、レビューや動作確認を経てから適用することが前提です。結果として、各部門が主体となって業務改善を進めやすくなります。
そのまま使うのではなく確認前提で活用する
注意点として、Copilotが生成したコードが必ずしも完璧であるとは限りません。意図したとおりに動作しなかったり、参照するセルがずれてしまったりする可能性があります。そのため、生成されたコードをそのまま実業務のデータに適用するのではなく、テスト用のファイルで動作確認を行い、必要に応じて微調整をしながら活用することが前提となります。
Copilotでマクロ作成を進めるメリット
マクロ作成を現場主導で進めることで、情シスや管理部門にとっても大きなメリットがあります。
現場の小さな自動化を進めやすい
各部門には、「システムを導入するほどではないものの、毎日の転記・集計・データ整形などに多くの時間を費やしている」業務が数多く存在します。Copilotを利用すれば、こうした小さな業務の自動化(マイクロタスクの効率化)をピンポイントで進めやすくなります。大規模なシステム改修を伴わず、現場の課題に応じて段階的に改善を進められる点もメリットです。
コードに不慣れな利用者でも着手しやすい
プログラミングの学習には時間がかかりますが、Copilotを使えば「日本語で指示を出す」だけでコードの案を得られます。VBAに詳しくない部門の担当者でも、業務改善の入口として気軽に着手しやすいのは大きな強みといえます。コードのたたき台を基に修正を重ねられるため、試行錯誤しながら改善を進めやすい点も特徴です。
属人化したExcel業務の見直しにつながる
長年運用されているExcelファイルのなかには、特定の担当者しか仕組みを理解していない「属人化」した状態のものがよく見られます。マクロ作成の過程で、Copilotに既存の複雑な数式やマクロの解読をサポートさせることで、ブラックボックス化していた処理の仕組みを可視化でき、業務手順の整理・見直しにつながります。担当者の異動や退職による業務停滞のリスク軽減にも役立ちます。
少人数の情シスでも全社改善を広げやすい
少人数体制の情シスでは、全社から集まるマクロ作成の要望にすべて応えることは物理的に不可能です。しかし、Copilotの活用方法を現場にレクチャーし、各部門が自走してマクロを作成できる環境を整えれば、情シス部門の負担を抑えつつ、全社的な業務改善を後押しできます。その結果、情シスはインフラ整備やセキュリティ対策など、本来注力すべき業務により多くの時間を充てやすくなります。
Copilotのマクロ作成を活かしやすい業務
本格的なシステム開発ではなく、日々のバックオフィス業務のなかでCopilotのマクロ作成を活かしやすい場面を整理します。
Excel集計や定型レポート作成
毎月の売上データの集計や、会議用の報告資料における表の整形などは、自動化の恩恵を受けやすい業務です。
特定の列を抽出する、不要なデータを削除する、表を整形するなどの定型的な加工処理は、Copilotでコード案や手順案を作りやすい領域です。
なお、Excelの標準機能やPower Query、数式で対応できる場合は、マクロ化せずに済むこともあります。保守性や引き継ぎやすさを考えると、まずは標準機能で対応できないかを確認し、そのうえでマクロ化する範囲を見極めることが重要です。
データ転記やフォーマット統一
複数のシステムからダウンロードしたCSVファイルの内容を、指定の定型フォーマットにコピー&ペーストするような作業も効率化できます。シート間のデータ転記や日付・金額の表示形式を統一する処理などは、手作業による転記ミスを防ぐうえでも効果的です。
チェック業務や一覧更新の補助
リストのなかから「期限切れの項目」や「未入力のセル」を探して色付けする、あるいは条件に合致するデータを別シートに抽出するといったチェック業務の補助にも向いています。目視確認の手間を減らし、一覧の更新漏れを防ぐためのツールとして活用できます。
問い合わせ対応用の補助ツール作成
現場部門だけでなく、情シスや総務部門などの管理部門が使う簡易的な業務補助ツール作成にも活用できます。例えば、社員名簿とシステムの登録アカウント一覧を突き合わせて差異を抽出するマクロなど、管理業務の負担を軽減するちょっとしたツールの作成に役立ちます。
全社展開の前に決めたいこと
Copilotを活用したマクロ作成を安全に全社へ広げるためには、事前にいくつかのルールを取り決めておくことが重要です。
どの業務を内製対象にするか決める
売上や財務に直結する重要な基幹処理や、エラーが発生した際の影響範囲が大きい業務は、初心者が作成したマクロで処理するべきではありません。まずは部門内で完結する定型・反復業務など、リスクの低い領域から内製対象として始める考え方が大切です。
VBAとOffice Scriptsの使い分けを確認する
なお、Excelの自動化にはVBAマクロだけでなく、Office ScriptsやPower Queryなどの選択肢もあります。VBAは主にExcelデスクトップ版で使われる仕組みで、既存のマクロ資産を活かしやすい一方、Office ScriptsはExcel on the webを含むクラウド環境での自動化に向いています。自社で利用しているExcel環境や、対象業務がデスクトップ中心かクラウド中心かを踏まえて、どの方法で自動化するかを決めることが重要です。
入力してよい情報・入力してはいけない情報を整理する
プロンプト(指示文)に、個人情報や社外秘の機密情報、実際の顧客データなどをそのまま入力しないようルールを定める必要があります。企業向けのMicrosoft 365 Copilotでは、Microsoft 365内の個人データがLLMの学習に使われないなど、業務利用を前提とした保護が用意されていますが、安全に利用するには、必要に応じてダミーデータや抽象化した条件でコード案を作成することが重要です。
レビューと動作確認のルールを決める
生成されたマクロを実務で使用する前に、「誰が確認し、どこまでテストしてから本番運用するか」というフローを明確にしておくことが重要です。テスト環境での動作確認はもちろん、作成者以外の第三者がレビューを行う仕組みがあるとより安全です。
マクロの保存・配布・実行ルールを決める
全社展開する場合は、作成したマクロをどこに保存するか、誰が利用できるか、どのような条件で実行を許可するかも決めておく必要があります。
外部から入手したマクロや、作成者・内容が確認できないマクロを安易に実行すると、情報漏えいやデータ破損につながるおそれがあります。部門内で利用する場合でも、保存場所、管理者、更新履歴、レビュー済みかどうかを分かるようにしておくと安全です。
部門向けの使い方ガイドを用意する
現場の担当者がスムーズに活用できるように、「どのような指示を出せばよいコードが返ってくるか」というプロンプトの例や、よくあるエラーへの対処法、社内ルールをまとめた簡単な使い方ガイドを情シスから用意しておくことをおすすめします。
Copilotでマクロ作成を定着させる進め方
ツールを導入しただけで終わらせず、実際の業務で使える状態をどう作るかを整理します。
まずは一部門・一業務から試す
最初から全社一斉に展開するのではなく、特定の部署や特定の定型業務からスモールスタートを切る進め方が効果的です。そこで出た課題や成功事例をノウハウとして蓄積し、段階的に他部門へ広げていくことで、スムーズな定着が見込めます。
情シスが活用パターンを整理して展開する
現場が毎回一から指示を考えるのは手間がかかります。情シス側で「データの転記を行いたい場合のプロンプト例」「不要な行を削除する際の指示のコツ」といった、よく使うパターンのテンプレートを整理して共有することで、現場のハードルを下げることができます。
利用者向けレクチャーを用意する
単なる機能や操作方法の説明だけでなく、「自身の業務のどこを自動化できるか」という視点を持つための勉強会やレクチャーを用意することが大切です。業務プロセスの見直し方からサポートすることで、より実践的な改善へとつながります。
自社だけで難しい場合は外部支援も活用する
「ルール策定からレクチャーまで行う社内リソースがない」といったお悩みを抱えるひとり情シスの場合、自社だけで推進するのは難しい場合があります。その際は、Microsoft 365の導入や運用定着を得意とする外部事業者の支援を活用し、方針整理や利用定着のサポートを受けるのも一つの有効な手段です。
まとめ
この記事では、Copilotを活用したマクロ作成について解説しました。
Copilotを活用したマクロ作成は何ができる?
Copilotでマクロ作成を進めるメリット
Copilotのマクロ作成を活かしやすい業務
全社展開の前に決めたいこと
Copilotでマクロ作成を定着させる進め方
Copilotは、本格的なシステム開発ではなく、現場の担当者が小さな定型業務の自動化を進めるための有効なツールです。
情シスとしては、対象業務の選定、入力ルール、テストやレビューの体制、そして現場への教育までを含めてしっかりと設計することが求められます。
しかし、少人数体制でこれらすべての環境整備を行うのは負担が大きい場合もあります。自社だけで活用展開が難しい場合は、専門的なノウハウを持つ外部事業者の導入・運用支援サービスをうまく取り入れながら、無理なく業務改善を進めてみてはいかがでしょうか。
『FGLテクノソリューションズ』では、Microsoft 365やMicrosoft Azure環境の運用支援をはじめ、ID・アカウント管理、ヘルプデスク対応、IT資産管理など、生成AI活用の土台となるIT環境の運用を幅広くサポートします。AIを安全かつ継続的に活用できる体制づくりについてお悩みの方はお気軽にご相談ください。







