ITサービスマネジメント(ITSM)とは? 運用する際の3つのポイント
ICT技術の進展によってデジタル化が進む今、事業活動にITサービスの活用が欠かせないものとなりました。
社内におけるITサービス全般の運用管理を担う情報システム部門(以下、情シス)または管理部門には、ITサービスを安定的に稼働させるとともに、業務部門で効率的かつ円滑な活用ができるように管理する役割があります。
しかし、情シスの人手不足や対応する業務範囲の広さなどから、十分にITサービスの管理と活用支援を行えていないケースも少なくありません。そこで重要となるのが、“ITサービスマネジメント(ITSM)”の運用です。
情シス担当者のなかには、「ITサービスマネジメントは何のために行うのか」「どのような取り組みが必要なのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ITサービスマネジメントの概要やメリット、運用する際のポイントについて解説します。
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情シスに求められるITサービスマネジメントとは
ITサービスマネジメントとは、ユーザーが必要とするITサービスの設計・運用・管理・改善などを体系的に行う仕組みです。
情シスでは、業務部門が活用するITサービスを安定かつ効率的に活用できるように提供・サポートする役割を担いますが、担当者の人手不足やITサービスの多様化・複雑化などによって以下の課題が生まれています。
▼情シスによるITサービスの管理に関する課題
- ITサービスの設計が部門や業務ごとに異なるため、管理のための知識・技術が多岐にわたる
- 情シス担当者によってITサービスの運用管理が属人化しており、社内の問い合わせ対応やインシデント対応を迅速に行えない
- 情シスの担当者が少ないため、業務部門からの問い合わせに手一杯となりコア業務に専念できない
このような問題を解決するには、ITサービスマネジメントの運用が必要です。
▼ITサービスマネジメントの目的
- ITサービスマネジメントシステム(ITSMS)を構築・運用して、担当者によって異なる情シス業務を統制する
- ITサービスの活用支援を行い、業務部門での作業効率と品質を向上する
- インシデントの予防と復旧対応を行い、ITサービスを安定的に提供する
なお、インシデント対応の流れについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
ITサービスマネジメントを運用するメリット
ITサービスマネジメントを運用することで、社内で使用するITサービスの管理を効率的に行えるようになるほか、ユーザー側の利便性向上にもつながります。
情シスの業務を標準化できる
ITサービスマネジメントを運用すると、情シスが対応しているITサービスの管理業務におけるプロセス・方法を標準化できます。
業務システムの保守管理やヘルプデスクの運用などを標準化できれば、属人的な業務が解消されて業務効率と品質の向上につながります。
社内ヘルプデスクの運用負担を削減できる
社内ヘルプデスクの運用にかかる情シスの業務負担を削減できることも、ITサービスマネジメントを運用するメリットの一つです。
▼ITサービスマネジメントの取り組み例
- 業務部門からの問い合わせ窓口を一箇所に集約して、ユーザーが必要な情報を検索できるシステムを活用する
- ユーザーの質問に対して、情シス担当者がテンプレートに沿って回答するルールを整備する
ヘルプデスクへの問い合わせ件数を減らしたり、回答時間を短縮したりして業務負担を削減できれば、情シス担当者がコア業務に時間を割けるようになります。
また、業務に必要な情報や質問を迅速に調べられるようになると、業務部門で働くユーザーの作業効率も向上します。
インシデントへの迅速な対応ができる
ITサービスマネジメントを運用すると、インシデントへの迅速な対応ができるようになります。
インシデントが発生した場合の対応方法・フローを統一して、情シスや業務部門と情報共有ができる仕組みを構築することで、迅速に初動・復旧対応を行えます。
これにより、セキュリティ事故やサイバー攻撃などによる被害を最小限に抑えられるほか、原因究明と再発防止に取り組むことによってITサービスを安定稼働できる環境へとつながります。
なお、障害対応のフローや障害発生リスクを防ぐ対策についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
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ITサービスマネジメントを運用する際のポイント
ITサービスマネジメントで管理するITサービスや業務の範囲は多岐にわたります。情シスがスムーズに運用するには、情報共有や業務プロセスを管理できる体制づくりが必要です。
①組織横断的な情報共有ができる環境を整備する
情シスがITサービスマネジメントを運用する際は、ほかの部門間を横断してスムーズに情報共有ができる環境を整備する必要があります。
ITサービスマネジメントは、情シスだけでなく業務部門のユーザーが持つ課題・ニーズを踏まえて、ITサービスをよりよく改善していくための取り組みです。
部門の垣根をなくして、円滑に情報共有ができる環境を整備することで、電話・メールによる連絡や、複数のシステムをまたいだ操作が不要になり、業務プロセスの効率化を図れます。
▼組織横断的な情報共有を行う方法
- ナレッジ管理ツールを導入して、各部署や従業員が持つ知識・ノウハウなどを蓄積して検索できるようにする
- 社内FAQを構築して、ITサービスの使い方やエラーへの対処方法などをユーザーが検索・共有できるようにする
- グループウェアを導入して、各種ITサービスへのアクセスをスムーズに行えるようにする
②PDCAを回して継続的に改善に取り組む
ユーザーが使いやすいITサービスを提供して、業務プロセスの改善や課題の解決につなげるには、PDCAを回して継続的に取り組むことが重要です。
社内のITサービスを運用するなかで、事業環境の変化や使用するシステムの変更、インシデントなどが起きた際に新たな課題が生じることもあります。
現場の課題・ニーズに沿ったITサービスを提供するには、ITサービスの設計や運用体制、セキュリティ対策などを戦略的に見直していくことが求められます。
▼ITサービスマネジメントのPDCA
項目 |
取り組み |
Plan(計画) |
現状のITサービスを可視化して、課題・ニーズに沿った導入計画とシステムの設計などを行う |
Do(実行) |
計画に基づいてITサービスの導入や新たな業務プロセスの仕組みを整える |
Check(評価) |
実行した施策の効果を測定して、オペレーションの改善点や新たな課題がないかを分析する |
Action(改善) |
効果測定の結果を基にITサービスや運用体制の見直しを行う |
③専用のプラットフォームを活用する
ITサービスマネジメントを行う際に、ITサービスマネジメントシステムを構築できる専用のプラットフォームを活用することも有効です。
ITサービスマネジメントシステムとは、組織の方針や目標を達成するためのプロセスを管理・運用する仕組みを指します。
専用のプラットフォームを活用することで、ITサービスに関する業務に合わせて効率的にマネジメントシステムを構築できます。
▼ITサービスマネジメントシステムに必要となる主な要素
管理業務 |
内容 |
ITインフラの構成管理 |
ネットワーク・ハードウェア・ソフトウェア・ドキュメントの情報を収集してIT資産の棚卸や保守管理を行う |
インシデント管理 |
ITサービスの監視をはじめ、インシデント対応のプロセス、問題の原因分析、対応履歴の管理などを行う |
ナレッジ管理 |
ITサービスの使用方法やルール、過去のインシデント情報などを蓄積して、ユーザーへの情報提供を行う |
なお、マネジメントシステムの国際規格となるISO認証については、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
まとめ
この記事では、ITサービスマネジメントについて以下の内容を解説しました。
- 情シスに求められるITサービスマネジメント
- ITサービスマネジメントを運用するメリット
- ITサービスマネジメントを運用する際のポイント
社内にさまざまなITサービスが存在する今、IT全般の運用管理を担う情シスでは、業務の属人化や問い合わせ対応の負担増加などの課題が生まれやすくなっています。必要なITサービスを安定かつ効率的に提供するには、ITサービスマネジメントに取り組むことが重要です。
『FGLテクノソリューションズ』の社内システム運用サービスでは、ITサービスマネジメントの一環となるITインフラの管理や資産管理などの情シス業務をサポートしています。また、ITサービスマネジメントシステムの国際規格“ISO20000”の認証を取得しており、効率的な運用とITサービスの安定した品質を確保しています。
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