社内システムをクラウド化するメリット・デメリットと移行の流れを解説
近年、あらゆる業界においてクラウドサービスや自社開発したクラウドシステムを利用した社内システムのクラウド化が進んでいます。総務省の『令和5年版 情報通信白書 データ集』によると、2022年時点で72.2%の企業がクラウドサービスを利用していると報告されています。
社内システムを物理的な環境で運用するオンプレミスで運用している企業では、クラウド化によって業務の効率化や柔軟な働き方の実現などのさまざまなメリットが期待できます。
企業のIT関連業務に携わる管理者のなかには「社内システムをクラウド化するメリットは何か」「どのような手順でクラウド化を進めればよいのか」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、社内システムをクラウド化するメリット・デメリットや移行の流れについて解説します。
出典:総務省『令和5年版 情報通信白書 データ集』
目次[非表示]
- 1.社内システムのクラウド化とは
- 2.社内システムをクラウド化するメリット
- 3.社内システムをクラウド化するデメリット
- 4.社内システムをクラウドへ移行する流れ
- 4.1.①現状課題と目的を明確にする
- 4.2.②移行対象のシステムを選定する
- 4.3.③アーキテクチャを設計する
- 4.4.④移行計画を策定する
- 4.5.⑤リハーサルと本番の切り替えを実施する
- 5.まとめ
社内システムのクラウド化とは
社内システムのクラウド化とは、オンプレミスで運用している社内システムをインターネット上にある仮想的なサーバへ切り替えることを指します。
▼クラウド化のイメージ
画像引用元:総務省『クラウドサービスとは?』
従来のオンプレミス環境では、物理的なサーバを社内に設置して、ソフトウェアがインストールされたパソコンで社内システムを利用する必要がありました。
社内システムをクラウド化すると、社内のサーバを経由することなく、インターネット環境があればどの端末からでもアクセスできるようになります。
このようなクラウド型のサービスは、一般的な事務処理や財務会計、人事管理、給与計算、顧客管理などのさまざまな領域で活用されています。
なお、サーバのリプレイスについてはこちらの記事をご確認ください。
出典:総務省『クラウドサービスとは?』
社内システムをクラウド化するメリット
社内システムをクラウド化すると物理的な環境に依存しなくなることから、保守運用や働き方などにさまざまなメリットが期待できます。
▼メリット
- 保守運用の労力やコストを削減できる
- 効率的かつ柔軟な働き方ができる
- BCP対策につながる
- 拡張性を確保できる など
社内システムをクラウド化すると、クラウドサービス事業者がアップデートやセキュリティ対策などの保守運用を行ってくれます。これにより、情報システム部門や管理部門が保守運用に対応する労力とコストを削減できます。
また、インターネット環境があれば社内システムにアクセスできるため、外出先または自宅からでも業務や情報共有を行うことが可能です。従業員同士の連携がスムーズとなることで業務の効率化につながるほか、リモートワークによる柔軟な働き方を実現できます。
さらに、社内システムの情報はクラウド上に保存されることから、自然災害によってサーバやIT機器の破損・故障が起きた場合でも、データの損失を防げます。事業拡大や業務プロセスの変更が必要になった際には、オプション機能の追加、ユーザー数の増減などを柔軟に行えることもメリットの一つです。
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社内システムをクラウド化するデメリット
社内システムのクラウド化には、いくつかデメリットもあります。
▼デメリット
- 安定したインターネット環境が必要
- カスタマイズの範囲が限定される
- 自社システムと連携できない場合がある
- 不正アクセスの危険性がある など
- 想定していた予算を超える
クラウド化した社内システムはインターネット経由でアクセスするため、回線が遅いまたは不安定になると快適に利用できない場合があります。
また、クラウドサービス事業者が提供しているサービスとなることから、機能や仕様をカスタマイズできる範囲は限定されます。業種や業務形態などに合わせた柔軟なカスタマイズが必要な場合は、社内システムを自社開発するほうがよいケースもあります。クラウドサービスによっては既存の社内システムと連携できない場合もあるため、事前に確認しておくことが重要です。
さらに、障害の発生やサイバー攻撃が原因となってデータの紛失または情報漏えいが発生したり、ユーザーID・パスワードが流出したりする可能性もあります。起こり得る脅威を想定したうえで、自社でも対策をとることが求められます。
サービス使用料については、データの使用量や通信量によって従量課金制となる場合があり、想定していた予算を超えてしまうケースも考えられます。海外のクラウドサービスを利用している場合には、為替の変動もリスクとなり得ます。
出典:総務省『クラウドサービス利用上の注意点』
社内システムをクラウドへ移行する流れ
社内システムをクラウド化する際は、現状課題と目的を踏まえたうえで移行計画を立てて進めることがポイントです。
①現状課題と目的を明確にする
自社が抱える現状課題を洗い出して、どのような目的でクラウド化するのかを明確にします。業務プロセスや運用管理などの課題を明らかにすることで、クラウド化の必要性を見極められます。
▼現状課題を洗い出す際に確認する項目
- 各部門で利用しているハードウェア・ソフトウェアの利用状況
- データの種類・形式と保存先
- 部門内・部門間での業務フロー など
また、クラウド化の目的を設定する際は、コスト削減や業務の効率化などについて具体的な目標値を設定することが重要です。
②移行対象のシステムを選定する
現状課題と目的を明確にしたら、クラウド化するシステムを選定します。
▼移行対象のシステムを選定する際に確認すること
- クラウド化によって業務フローが変更になる範囲
- クラウド化によって移行するデータの種類・範囲
- クラウド化した社内システムの連携範囲 など
クラウド化する範囲によって業務フローが変わるほか、必要なクラウドサービスの機能が異なるため、課題の優先順位やセキュリティの観点から判断することがポイントです。
③アーキテクチャを設計する
クラウド化するシステムの範囲を決定したあとは、アーキテクチャを設計してどのような方法・手順で移行を行うかを定めます。クラウドへ移行する代表的な方法には、5Rと呼ばれる手法が存在します。
▼クラウド移行の5つの手法
手法 |
概要 |
Rehost
(リホスト)
|
既存システムに変更を加えず、オンプレミスのデータをクラウド環境へ移行する |
Refactoring
(リファクタリング)
|
クラウドサービスの機能を活用してシステムを再構築する |
Revise
(リバイス)
|
既存システムのコードを変更してクラウド環境で最適化する |
Rebuild
(リビルド)
|
既存システムをクラウド環境で稼働させるために再構築を行う |
Replace
(リプレイス)
|
既存システムをすべてクラウドサービス事業者のアプリケーションに置き換える |
④移行計画を策定する
クラウド化するアーキテクチャを設計できたら、具体的な移行計画を策定します。
▼移行計画で定める項目
- クラウドへ移行するシステムの範囲
- クラウドへの移行方法
- 移行スケジュール
- 予算
- 移行作業を行うメンバー など
移行スケジュールを設定する際は、業務への影響を踏まえて社内システムを小さな範囲からクラウドへ切り替えていくことが重要です。また、スムーズに切り替えができるように、社内システムに関するマニュアルを作成して管理者と従業員で共有しておく必要があります。
⑤リハーサルと本番の切り替えを実施する
本番と同じ環境のテストサーバでクラウド移行のリハーサルを行い、問題点の修正と再テストを実施します。問題なく移行できることを確認したら、移行計画に基づいて切り替え作業を行います。
また、クラウド移行が完了したあとは、社内システムの動作確認を実施して新しい業務フローでの運用を開始します。移行直後は、社内システムの操作方法や業務フローなどについてトラブルが発生する可能性があるため、サポートできる体制を整えておくことがポイントです。
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まとめ
この記事では、社内システムのクラウド化について以下の内容を解説しました。
- 社内システムをクラウド化する仕組み
- 社内システムをクラウド化するメリット・デメリット
- 社内システムをクラウドへ移行する流れ
社内システムをクラウド化すると、保守運用の労力とコストを削減できるほか、リモートワークの実現やBCP対策などにつながります。ただし、カスタマイズの範囲が限定的になったり、ほかの業務システムとの連携ができなかったりする可能性があるため、事前に確認しておくことが必要です。
また、クラウドへの移行を進める際は、現状課題と目的を明確にしたうえで移行対象のシステムを選定するとともに、移行計画を定めて取り組むことがポイントです。移行後は、現場でスムーズな活用ができるようにサポートを行うことも欠かせません。
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