社内インフラを整備する手順と重視する3つのポイント
※2024年7月17日更新
企業の情報システム(以下、情シス)部門が対応する業務の一つに“社内インフラの整備”が挙げられます。インフラは一般的に電気・ガス・水道などの公共設備を指しますが、社内インフラには、インターネット環境やパソコン、業務ツールなどのITに関する環境・設備も含まれます。
社内インフラは、企業が事業を運営するための基盤となるため、安全かつ円滑に業務を行えるような環境整備が求められます。
情シス部門や管理部門の担当者のなかには、「自社のみで社内インフラを整備できるのか」「特に重要視しておくポイントや注意点はあるのか」などと疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、社内インフラの整備について、準備や手順、3つのポイントを解説します。
目次[非表示]
- 1.社内インフラを整備する前に必要な準備
- 1.1.目的・課題を明確化する
- 1.2.整備する範囲を決める
- 1.3.保守運用を行う人材を確保する
- 2.社内インフラを整備する手順
- 2.1.①計画を立てる
- 2.2.②社内インフラを設計する
- 2.3.③社内インフラを構築する
- 2.4.④テスト実施と運用開始
- 3.社内インフラを整備する際に重視する3つのポイント
- 3.1.①BCP対策を実施する
- 3.2.②セキュリティを確保する
- 3.3.③業務を効率的に行える環境をつくる
- 4.社内インフラの整備を外注することも可能
- 5.社内インフラの整備を依頼する外注先の選び方
- 5.1.運用サポートが充実している
- 5.2.自社の規模・業種での実績が豊富にある
- 6.まとめ
社内インフラを整備する前に必要な準備
社内インフラの整備を行う際は、準備として目的・課題を明確にしたり、整備する範囲を策定したりする必要があります。また、整備したインフラの保守・運用を行う人材も確保しておくことも重要です。
目的・課題を明確化する
社内インフラの整備を行う目的や社内インフラの整備によって解決したい課題を前もって明確にしておくと、インフラ整備のフローを円滑に進められます。
▼目的・課題の例
- 業務を効率化させたい
- 多様な働き方を実現したい
- 自社の競争力を確保したい
- セキュリティ対策を強化したい など
また、目的・課題を明確にする際は、自社の従業員に対して広くヒアリングすることで自社の実態に即したインフラ整備を行えるようになります。
整備する範囲を決める
社内インフラの整備を行う際は、整備する範囲を策定する必要があります。具体的には、社内での運用に限定して整備するのか、あるいは社外でも使用できるように整備するのかを決めます。
社内インフラは、整備する範囲によって以下の特徴があります。
▼整備する範囲による社内インフラの特徴
整備する範囲 |
特徴 |
社内のみ |
セキュリティの安全性が確保しやすい |
社外に対応 |
業務における利便性の向上が期待できる |
自社の風土や業務内容に合わせた社内インフラを整備することが有効です。
保守運用を行う人材を確保する
社内インフラを整備したあとには、保守運用を行う人材が必要です。社内インフラの保守運用を行う人材を確保していない場合、障害や不具合によって業務に支障をきたす可能性があります。
社内インフラの保守運用を行える人材が社内にいない場合は、採用によって獲得したり、社内での人材育成を行ったりする方法のほか、ITアウトソーシング(業務代行)を活用する方法もあります。
社内インフラを整備する手順
社内インフラの整備を行う際は、一つひとつ必要な要素を洗い出して計画的に構築・整備していくことが重要です。
ここでは、社内インフラをオンプレミスで新規構築する際の一般的な流れを解説します。
なお、社内インフラの構築についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
①計画を立てる
社内インフラを整備する際は、事前に明確にした目的・課題に沿って導入の計画を作成する必要があります。
計画の作成においては、自社の業務内容やフローに合わせて、必要なインフラ環境を洗い出すことがポイントです。また、どれくらいの予算が確保できるかについても確認しておきます。
②社内インフラを設計する
必要なインフラ設備・環境を洗い出して計画を立てたあとは、詳細な設計を行います。インフラ整備に必要な要素を選定するとともに、求める性能・スペックなどを定めます。
この際、業務内容・フローを問題なく行えるインフラ環境になっているか、通信速度やセキュリティに問題はないかなども検討する必要があります。
▼社内インフラに必要な要素
- ネットワーク
- サーバー
- エンドポイントデバイス
- ソフトウェア
また、インフラリソースの設計に加えて、以下の要素も合わせて検討して構成を決定します。
▼構成の決定に必要な要素
- ベンダー保守レベル
- 信頼性
- 可用性
- セキュリティレベル
- 性能
- 拡張性
- メンテナンス性
③社内インフラを構築する
設計内容に沿って、社内の情シス部門やITアウトソーシング事業者などが中心となって社内インフラの構築を実施します。
社内インフラを構築する際に必要な業務は、主に以下のとおりです。
▼社内インフラを構築する際に必要な業務
- 社内・外部ネットワークの構築
- サーバールームの設置、データセンターの利用
- 自社サーバーの構築
- ハードウェア・ソフトウェアの購入・設定
- 業務システムやグループウェアの導入
④テスト実施と運用開始
社内インフラを構築したあとは、計画・設計どおりに問題なく稼働するかテストを実施して、不具合があった際には修正を行います。
一つひとつの機器・システムをテストして、問題なければ順番に接続して、最終的に全体でテストします。
テスト完了後は、実際に現場で運用開始して従業員からフィードバックをもらって改善したり、安定稼働に向けてメンテナンス・監視したりすることも重要です。
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社内インフラを整備する際に重視する3つのポイント
社内インフラを整備する際は、基本的な環境整備に加えて、BCP対策やセキュリティの確保を行う必要があります。また、快適なインターネット環境を構築することで業務を効率的に行えるようになります。
①BCP対策を実施する
BCPとは、自然災害やネットワーク障害などが起きた際に、損失を最小限に抑えつつ、事業を継続できるようにするための取り組みを定めた計画です。
災害や障害が起きて社内インフラの機能が停止すると、業務の遂行に影響が出てしまうほか、社内データが破損・消失してしまうリスクがあります。これらのリスクを防ぐために、以下の対応が求められます。
▼BCP対策の例
- ネットワーク回線を冗長化(※)する
- クラウドサーバーを構築(移行)する
- パソコンやタブレットの予備を用意する など
特にクラウド提供のサービスに関するデータ保護は重要です。クラウド事業者はすべてのデータ保護を保証している訳ではありません。契約前にサービス規約をよく確認して、自社で保護が必要なデータの範囲を見極める必要があります。
※ネットワークの冗長化とは、メイン回線の障害時にもう一つの回線に切り替えて接続を維持すること。
②セキュリティを確保する
社内インフラを整備する際は、セキュリティを確保することが重要です。
外部のネットワークを利用して社内サーバーやクラウドサーバーにアクセスする場合、サイバー攻撃・不正アクセスのリスクが伴います。また、リモートワークや外出先で業務を行う場合、パソコン・USBメモリなどの紛失によって情報漏えいにつながる可能性もあります。
安全な社内インフラを整備するためには、ゼロトラストネットワーク(※1)の設計が求められます。
▼セキュリティ対策の例
- パソコン・USBメモリの持ち出しルールを定める
- ネットワークのアクセス制限を設ける
- ソフトウェアやアプリケーションのID・ログ管理を行う
- EPP(※2)やEDR(※3)などのセキュリティシステムを導入する
※1・・・ゼロトラストネットワークとは、社内外にかかわらず、すべてのアクセスを信頼せずにあらゆる通信・端末を検査するセキュリティ対策のアプローチのこと。
※2・・・EPP(Endpoint Protection Platform:エンドポイント・プロテクション・プラットフォーム)とは、IT機器に侵入しようとするマルウェアを防ぐシステムのこと。
※3・・・EDR(Endpoint Detection and Response:エンドポイント・ディテクション・アンド・レスポンス)とは、常に監視を行い、マルウェアの侵入を検知したらすぐに管理者に通知するシステムのこと。
③業務を効率的に行える環境をつくる
業務を効率的に行うには、社内インフラを快適に利用できる環境づくりが求められます。
インターネット通信における遅延の有無や端末の操作方法などを確認して、利用しやすい社内インフラ環境を整備することがポイントです。
▼快適な環境づくりの例
- 高速で安定したネットワークを構築する
- 処理性能の高いサーバーやパソコンを導入する
- 社外からでも業務を行えるようにクラウドツールを導入する など
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社内インフラの整備を外注することも可能
自社の人員が足りずにインフラ整備まで手が回らなかったり、専門知識がなかったりする場合、社内インフラの整備をITアウトソーシング事業者に外注する方法もあります。
社内インフラの整備に必要な計画立案やシステムの選定、ネットワーク構築などの作業を一括で依頼できるため、情シス担当者の負担を軽減できます。
▼ITアウトソーシングを活用するメリット
- 情報システム部門の業務負担を軽減できる
- 専門知識があるプロに社内インフラの設計を任せられる
- コア業務に自社のリソースを集中できる など
なお、情シス業務をITアウトソーシングする方法と依頼する際のポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
社内インフラの整備を依頼する外注先の選び方
社内インフラの整備をITアウトソーシング事業者に外注する際は、サポートの対応範囲や過去の実績などについて確認しておくことがポイントです。
運用サポートが充実している
前述のとおり、社内インフラを整備したあとには保守・運用を行って障害や不具合などのトラブルに対応する必要があります。
社内インフラの整備を、整備後の保守・運用まで含めてトータルでサポートしてもらえる事業者に依頼することが有効です。
自社の規模・業種での実績が豊富にある
社内インフラの外注を行う際は、依頼する事業者の過去の実績を確認しておきます。この際、自社と同程度の規模で同業種での実績を確認することが重要です。
社内インフラは、規模や業種によって導入する機器やソフトウェアなどが異なります。自社に似た企業での実績のある事業者であれば、自社に合った提案をしてもらうことが期待できます。
まとめ
この記事では、社内インフラについて以下の内容を解説しました。
- 社内インフラを整備する前の準備
- 社内インフラを整備する手順
- 社内インフラを整備する際のポイント
- 社内インフラの外注について
- 社内インフラを外注する事業者の選び方
社内インフラは、企業が事業を安全かつ円滑に行うために欠かせない環境です。
整備するには、目的や整備する範囲を決めたうえで、計画立案・設計・構築・テスト・運用といったプロセスで進める必要があります。また、災害・障害時の対策やセキュリティ性、快適性なども考慮することが求められます。
自社の情シス部門だけで社内インフラの整備が難しい場合には、ITアウトソーシングを活用することも一つの方法です。運用サポートが充実して実績が豊富な事業者に依頼することで、自社に合った社内インフラの構築作業から保守運用までを一括で行ってもらえます。
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