DXに立ちはだかる“2025年の崖”を乗り越えるための3つの対策
近年、少子高齢化による労働力人口の減少やICTの進展など、企業を取り巻く環境が変化しています。そのような環境のなかで競争優位性を確立していくには、新たなデジタル技術を活用してビジネスモデルの変革を図る“DX(デジタルトランスフォーメーション)をスピーディに進めていくことが求められます。
しかし、総務省の『令和4年版 情報通信白書』によると、日本でDXに取り組んでいる企業は約56%となっており、一部の企業にとどまっている状況です。
このままDXを実現できない場合には、市場の変化や顧客のニーズに対応できず競争の敗者となってしまい、2025年には最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性が経済産業省によって示唆されています。この問題は、“2025年の崖”と呼ばれます。
企業の情報システム部門または管理部門では、近い未来に待ち受ける2025年の崖を乗り越えるためにどのような対策が必要なのか模索している方もいるのではないでしょうか。
この記事では、DXを推進する際の障壁となる課題を踏まえつつ、2025年の崖を乗り越えるための対策について解説します。
出典:総務省『令和4年版 情報通信白書』/経済産業省『DXレポート』
目次[非表示]
企業が直面する2025年の崖とは
2025年の崖とは、既存システムが抱える問題を解消できずDXを実現できない場合に、2025年以降に発生しうる経済損失のことです。
DXは、経済産業省によって以下のように定義されています。
▼DXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
引用元:経済産業省『デジタルガバナンス・コード2.0』
事業部門ごとにITシステムを個別に構築していたり、過剰なカスタマイズがされたりしている場合には、既存システムの老朽化・複雑化・ブラックボックス化が進んでいる可能性があります。
このような既存システムを“レガシーシステム”といい、組織横断的なデータ活用の妨げとなるほか、高コスト構造を招く原因となっています。
経済産業省の『DXレポート』によると、約8割の企業がレガシーシステムを抱えていることが報告されています。
▼老朽化したレガシーシステムの保有状況
画像引用元:経済産業省『DXレポート』
また、そのうちの約7割の企業が「レガシーシステムがDXの足かせとなっている」と感じている調査結果も出ています。
▼レガシーシステムがDXの足かせとなっていると感じている企業の割合
画像引用元:経済産業省『DXレポート』
企業がレガシーシステムの問題を解消できない場合には、2025年以降、現在の約3倍となる最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると推計されています。
出典:経済産業省『DXレポート』『デジタルガバナンス・コード2.0 』
DXの障壁となるレガシーシステムの課題
DXを推進するには、組織横断的なシステム連携とデータ活用を行うために、既存のレガシーシステムを見直していくことが求められます。
しかし、現状ではレガシーシステムの運用管理にIT予算の約8割が割かれており、資金や人材を戦略的に投資できていないケースもあります。レガシーシステムの見直しが進まない場合には、以下の問題につながるリスクが懸念されています。
▼レガシーシステムが抱えるリスク
- 保守・維持管理コストが高額化する
- 保守運用の担い手不足によってセキュリティや事故・災害によるシステムトラブル、データ流出のリスクが高まる
- ベンダーによるサポート終了によってシステムの維持・継承が困難になる
さらに近年ではIT人材の不足感が高まっており、2025年には約43万人まで人材不足が拡大すると予測されています。DXの推進に必要な先端IT人材を新たに確保できない、または保守運用にリソースを奪われてしまう場合には、レガシーシステムの問題解決に取り組むことが難しくなると考えられます。
情報システム部門や管理部門では、予算や人材リソースを踏まえて、レガシーシステムの問題解決を図るための戦略的な計画を立てることが必要です。
出典:経済産業省『DXレポート』/国土交通省『2 DXの重要性と我が国におけるDXの現状』
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2025年の崖を乗り越えるための対策
近い未来に待ち受ける2025年の崖を乗り越えるには、レガシーシステムの刷新や人材リソースの不足を解消するための取り組みが求められます。
①情報資産を見える化する
レガシーシステムの現状を把握して経営層へのシステム刷新を後押しするために、情報資産を見える化する必要があります。
情報資産を見える化することによって、現状におけるレガシーシステムの課題と刷新が必要なシステムを検討できるようになります。
▼情報資産の内容
情報資産の種類 |
詳細 |
IT資産 |
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システムの運用状況 |
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管理形態 |
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②情報資産を分析・評価してシステム刷新の計画を立てる
システムの刷新にはコストと時間がかかるほか、現場の課題・ニーズにそぐわないシステムは刷新後に再レガシー化してしまうリスクがあります。
コストとリスクを抑えてシステムの刷新を行うには、見える化した情報資産を分析・評価して、導入範囲や必要な機能などを仕分けして取り組むことが重要です。
情報資産を分析・評価する際は、以下の4つの軸で機能を基に評価を行い、刷新後のシステムに求められるアーキテクチャを作成することがポイントです。
▼情報資産のアーキテクチャを作成する際の評価項目
画像引用元:経済産業省『DXレポート』
頻繁な更新が求められる機能については、マイクロサービス(※)を活用して、段階的に刷新を図ることも一つの方法です。
また、非競争の業界・分野において、標準的・共通的な業務がある場合には、複数の企業が協力して共通のプラットフォームを構築することで、コストや失敗リスクの低減を図れます。
※複数の独立したサービスを組み合わせてソフトウェアを開発する方法。
出典:経済産業省『DXレポート』
③ITアウトソーシング(業務代行)による人材リソースの充足
レガシーシステムの刷新を図るうえで、デジタル技術の知識・スキルを持つ先端IT人材の確保は企業にとって欠かせない取り組みといえます。
しかし、前述したように多くの企業でIT人材は不足しているため、短期的な人材確保や育成によるスキルシフトは容易ではないと考えられます。
レガシーシステムを刷新してDXを推進するには、ITアウトソーシング(業務代行)を活用して自社で確保が難しい人材リソースをうまく補うことが重要です。
なお、IT人材の育成とITアウトソーシングの活用についてはこちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、2025年の崖を乗り越えるための対策について以下の内容を解説しました。
- 企業が直面する2025年の崖
- DXの障壁となるレガシーシステムの課題
- 2025年の崖を乗り越えるための対策
DXを推進するには、組織横断的なシステム連携とデータ活用を行うためのITインフラ環境を構築することが必要です。レガシーシステムが存在している場合には、保守・維持管理にかかるコストの高額化やセキュリティ事故の発生などのリスクが生じて、経済損失にもつながる可能性があります。
企業が2025年の崖を乗り越えるには、情報資産の見える化を行ったうえで、分析・評価をして刷新後のアーキテクチャを作成することがポイントです。また、デジタル技術の知識・スキルを持つ先端IT人材を自社で確保するのが難しい場合には、ITアウトソーシングで不足するリソースを補うことも有効といえます。
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