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システム障害への対応力を高めるには? ITレジリエンスを強化する3つのポイント

※2025年7月9日更新

業務の遂行や顧客へのサービス提供などにITシステムが欠かせなくなった今、社内のシステムを安定的に稼働できる体制づくりが求められます。そのためには、システム障害を予防するだけでなく、異常や不具合をいち早く発見して、正常な状態へと迅速に復旧する“ITレジリエンス”を強化することが重要です。

レジリエンスには、回復力や復元力などの意味があります。ITレジリエンスとは、システム障害が発生した際に速やかな復旧と被害の最小化を図れる組織力のことです。

企業の情報システム部門や管理部門では、ITレジリエンスを強化してシステム障害への対応力を身につけるために、「どのような予防が必要なのか」「被害の最小化や迅速な復旧対応につなげるにはどうすればよいか」と悩まれている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、システム障害の予防方法とITレジリエンスを強化するポイントについて解説します。

なお、システム障害が起きる原因と発生を防ぐためのポイントは、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

  システム障害はなぜ起きる? 主な原因と発生を防ぐためのポイントとは 企業でシステム障害が発生した場合には、業務を継続できなくなることで生産性の低下や事業活動の機会損失につながるリスクがあります。この記事では、システム障害が起きる原因や対応フロー、障害の発生を防ぐための対策のポイントについて解説します。 株式会社FGLテクノソリューションズ


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目次[非表示]

  1. 1.システム障害の対応力“ITレジリエンス”を強化する重要性
  2. 2.ITレジリエンスを強化する3つのポイント
    1. 2.1.①システム障害の予防策を実施する
      1. 2.1.1.システム監視を自動化する
      2. 2.1.2.多層防御を取り入れる
      3. 2.1.3.サーバやネットワークの負荷を分散する
      4. 2.1.4.サーバの冗長化を実施する
    2. 2.2.②システム障害発生時の復旧を迅速化する
      1. 2.2.1.コンティンジェンシープランを策定する
      2. 2.2.2.障害対応のフローを定める
      3. 2.2.3.DR対策を実施する
    3. 2.3.③再発を防止するための体制を整備する
      1. 2.3.1.システム障害に関するデータを収集・分析する
      2. 2.3.2.インシデント訓練を実施する
      3. 2.3.3.ITリスクアセスメントを実施する
  3. 3.まとめ


システム障害の対応力“ITレジリエンス”を強化する重要性

社内でシステム障害の予防を行っていても、サイバー攻撃や通信障害、保守運用時のヒューマンエラーなどによって、不具合・停止などのトラブルに発展するリスクがあります。

ひとたびシステムの停止が発生すると業務を遂行できず、サービスを提供できなくなったり、関係者とのトラブルが発生したりして重大な損害につながる可能性があります。

これらのリスクを回避するには、システム障害に向けた対策を行ってITレジリエンスを強化することが欠かせません。



ITレジリエンスを強化する3つのポイント

ITレジリエンスを強化するポイントは、予防と復旧、再発防止の3つの観点に大きく分けられます。


①システム障害の予防策を実施する

システム障害を予防するには、システム監視の自動化や多層防御の導入が有効です。また、サーバ・ネットワークの負荷を分散したり、サーバの冗長化を実施したりすることで、障害が起こった際のリスクを軽減できます。


システム監視を自動化する

システム監視を自動化することで、24時間365日の体制での監視が実現します。これにより、システム障害の異常を速やかに検知して対応できるようになります。

目視や巡回などによってシステム監視を行っている現場では、異常の発見が遅れたり、見逃したりする可能性が考えられます。ツールを導入して、社内のITインフラやサービスなどの稼働状況を監視することで、ヒューマンエラーをなくせるほか、異常の検知と管理者への通知を迅速に行えるようになります。

なお、システム監視の進め方や注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

  社内システムの監視で安定稼働を目指す! 監視対象や進め方、注意点とは? 社内システムの監視の重要性と効率的な運用方法を解説。監視対象や進め方、注意点を詳しく紹介し、システム障害を未然に防ぐための具体的な手法をお伝えします。業務の安定運営に役立つ情報が満載です。 株式会社FGLテクノソリューションズ


多層防御を取り入れる

セキュリティ対策を複数の領域において行う多層防御を取り入れることで、サイバー攻撃に起因するシステム障害の予防が期待できます。

多層防御においては、一般的に以下の3段階でのセキュリティ対策を講じます。


▼多層防御の領域

対策の種類

概要

具体例

入口対策

ウイルスやマルウェアなどの侵入を防ぐための対策

不正侵入検知システムの導入
不正侵入防止システムの導入 など

内部対策

侵入による異常を検知して、被害が出る前に対処するための対策

ウイルス対策ソフトの導入
ログ監視の実施 など

出口対策

内側から外部への情報の持ち出しが行えないようにする対策

社外へのアクセス経路の制限
データ損失防止の実施 など


サーバやネットワークの負荷を分散する

サーバやネットワークの負荷を分散することで、システム障害によってサーバ・ネットワーク全体が停止する事態を回避できます。

負荷の分散とは、特定のサーバに負荷が集中しないようにほかのサーバへと処理を均一に分散することです。万が一、1つのサーバが停止したとしても、ほかのサーバを利用することでシステムを継続的に稼働できるようになります。


サーバの冗長化を実施する

サーバの冗長化を実施することで、システム障害時の影響を抑えられます。

サーバの冗長化とは、予備のサーバやネットワーク機器を用意して並列で稼働させるシステム構築の方法です。

システム障害が発生した場合に、予備のサーバやネットワーク機器に切り替えることによって継続的に稼働できるようになります。

また、複数のサーバを運用することで、メンテナンスや改修を行う際に発生するサービスの停止時間を最小限に抑えることが可能です。



②システム障害発生時の復旧を迅速化する

システム障害発生時の復旧を迅速化する方法としては、コンティンジェンシープランの策定や障害対応のフロー作成、DR対策の実施などが考えられます。


コンティンジェンシープランを策定する

システム障害による損害を最小限に抑えるには、コンティンジェンシープランを策定して、システム障害が発生した際の代替策・復旧策を確立しておくことが重要です。

コンティンジェンシープランとは、不足の事態が発生した際に事業活動への影響を最小限に食い止めるための基本の行動方針や業務体制を定めた計画のことです。

コンティンジェンシープランの策定にあたっては、以下の項目を考慮して業務遂行に必要な経営資源や代替策などを検討します。


▼コンティンジェンシープランを策定する際に考慮する項目

項目
検討する内容
復旧する状態
復旧発生時点の近くまでどれくらい戻れるか
復旧までの時間
中核となる業務(システム)の停止時間をどれくらい容認できるか
継続する業務
中核となる業務(システム)は何で、レベルダウンがどれくらい容認できるか


コンティンジェンシープランを策定したあとは、障害訓練を実施して従業員が緊急時に対応できるようにしておく必要があります。


障害対応のフローを定める

システム障害が発生した際の対応フローを策定して社内に周知することで、復旧を迅速に行いやすくなります。

システム障害の内容・範囲・業務への影響度・セキュリティ上のリスクなどを調査したうえで関係者への報告を行い、業務を継続するための代替策を検討します。

また、復旧を行うための作業計画や手順を作成して、原因の特定に時間がかかる場合の暫定措置を検討しておくことも大切です。


▼障害発生時の対応フロー

  1. 障害事象の確認
  2. 関係者への報告
  3. 障害による影響範囲の調査と代替策の検討
  4. 解析と仮説検証による障害原因の特定
  5. 作業計画に基づいた復旧作業の実施
  6. 報告書の作成と再発防止のための対策の実施


システム障害の対応フローについてはこちらの記事をご確認ください。

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DR対策を実施する

DR対策を実施することで、計画的な復旧が行いやすくなります。

DR(Disaster Recovery)対策とは、自然災害やセキュリティ上のインシデントなどによって発生したシステム障害を復旧するための対策のことです。

被害の最小化や迅速な問題解決を図るために、リスクごとに障害のシナリオを想定した復旧プランを立てます。DR対策の実施にあたっては、3つの目標値を設定して具体的な取り組みを検討することがポイントです。


▼3つの目標値

目標値

詳細

RPO(目標復旧地点)

システム障害の発生前において、過去のどの地点までデータを復元するかを定めた目標値

RTO(目標復旧時間)

システム障害の発生後に組織の業務が停止しても許容できる最大時間を定めた目標値

RLO(目標復旧レベル)

平常稼働時を100%として、どれくらいの割合でシステムを復旧させるのかを定めた目標値


③再発を防止するための体制を整備する

システム障害の再発を防止するには、データの収集・分析や従業員のインシデント訓練などを行う必要があります。また、ITリスクアセスメントの実施も有効です。


システム障害に関するデータを収集・分析する

発生したシステム障害に関するデータを収集・分析することで障害の原因を明確にしたうえで適切な対策を策定しやすくなります。


▼収集・分析するデータの例

  • 障害の概要
  • 原因
  • 原因の起因となった工程
  • 原因の起因となった変更内容
  • 対応内容
  • 障害の影響 など


収集・分析した内容は報告書にまとめることで、メンバー間での共有やノウハウとしての蓄積が効率的に行えます。


インシデント訓練を実施する

障害発生時の対応フローを策定したうえで、実践できるように訓練を行うことで、システム障害の再発防止が図れます。

インシデント訓練は、従業員の意識や対応の習熟度を高めるだけでなく、対応フロー自体に問題がないかの見直しを行うためにも重要です。


ITリスクアセスメントを実施する

システム障害の再発防止のためには、ITリスクアセスメントの実施も有効です。

ITリスクアセスメントとは、自社における現状のセキュリティリスクを洗い出して分析したうえで対策を講じる手法です。

この際、セキュリティリスクによる影響度と発生可能性に基づく評価を行うことが欠かせません。これによって対策するリスクの優先順位が明確になり、自社のリソースを効率的に利用できます。

なお、システム障害の対応をアウトソーシングすることも可能です。メリットはこちらの資料をご確認ください。

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まとめ

この記事では、システム障害への対応力について以下の内容を解説しました。


  • システム障害の対応力“ITレジリエンス”を強化する重要性
  • ITレジリエンスを強化する3つのポイント


システム障害に備えて予防策を講じていても、サイバー攻撃や災害などによって不具合・停止などのトラブルが起こる可能性があります。システム停止による損害を最小限に抑えるには、異常を検知して迅速な復旧対応ができるITレジリエンスを強化することが重要です。

ITレジリエンスを強化するには、予防・復旧・再発防止の3つの観点からシステム障害への対策に取り組むことが欠かせません。

FGLテクノソリューションズ』の社内システム運用サービスでは、事業活動の基盤となるITインフラの監視の総合的な監視と障害対応の代行を承っております。


サービスの詳細については、こちらから資料をダウンロードしていただけます。

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山根 佐利
山根 佐利
1998年に入社し、インフラエンジニアとしてシステム導入から運用を担当しました。 2000年には社内情シス業務のアウトソーシングサービスを立ち上げ、現在はマーケティング兼プリセールスを担当し、サービス事業部と共に自社の社内情シス担当も兼務してノウハウを習得しています。

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