法人向けパソコンを廃棄する方法とは? 法令による規定と押さえておくポイント
業務の効率化・省力化や柔軟な働き方の実現などに向けてデジタル化が推進される今、パソコンは業務に欠かせないものとなっています。しかし、パソコンの法定耐用年数は4年とされており、長期間使用し続けていると性能の低下や故障・不具合が発生するリスクがあります。
業務への影響を防ぐためには、使用年数や劣化・老朽化の状態に応じてパソコンの廃棄とリプレイスを行うことが必要です。
企業の情報システム部門や管理部門の担当者のなかには、「古くなったパソコンはどのように廃棄すればよいのか」「パソコンの廃棄を円滑に行うために気をつけることはあるか」などと疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
この記事では、法人向けのパソコンを廃棄する際の規定や実施方法、押さえておくポイントについて解説します。
なお、システムのリプレイスについてはこちらの記事をご確認ください。
出典:国税庁『主な減価償却資産の耐用年数表』
目次[非表示]
- 1.法人向けパソコンの廃棄に関する規定
- 1.1.マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付
- 1.2.再生資源・再生部品としての利用促進
- 2.法人向けパソコンの廃棄方法
- 2.1.①産業廃棄物処理事業者
- 2.2.②リサイクル事業者
- 2.3.③パソコンのメーカー
- 3.法人がパソコンを廃棄する際のポイント
- 3.1.①情報漏えいの対策を行う
- 3.2.②会社情報が確実な事業者に依頼する
- 3.3.③IT資産管理を行う
- 4.まとめ
法人向けパソコンの廃棄に関する規定
法人向けパソコンの廃棄には、法令による規定が設けられています。
マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付
法人が廃棄するパソコンは“産業廃棄物”として扱われます。そのため『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』第3条で定められた規定に沿って、法人側の責任で適切に廃棄する必要があります。
▼廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第3条
(事業者の責務)第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
引用元:e-Gov検索『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』
産業廃棄物の排出事業者が、収集・運搬・処分を外部に委託する際に交付する伝票を“マニフェスト(産業廃棄物管理票)”といいます。
同法第12条の3により、すべての産業廃棄物の委託処理に対して排出事業者によるマニフェストの交付が義務づけられています。
▼廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第12条の3
(産業廃棄物管理票)第十二条の三 その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者(中間処理業者を含む。)は、その産業廃棄物(中間処理産業廃棄物を含む。第十二条の五第一項及び第二項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合(環境省令で定める場合を除く。)には、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者(当該委託が産業廃棄物の処分のみに係るものである場合にあつては、その処分を受託した者)に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票(以下単に「管理票」という。)を交付しなければならない。
引用元:e-Gov検索『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』
マニュフェストを交付されたあとは、データを消去した証明書を証票として残しておくことが重要です。
出典:環境省『電子マニフェスト普及拡大に向けたロードマップに基づく マニフェスト制度の運用状況の総点検に関する報告』/e-Gov検索『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』
再生資源・再生部品としての利用促進
『資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律)』では、循環型社会を形成するために事業者へ3Rの取り組みを推進しています。
▼3Rの取り組み
3R |
意味 |
手段 |
目的 |
リデュース
(Reduce)
|
廃棄物の
発生抑制
|
資源利用効率を高める |
廃棄物となる資源の利用を抑える |
リユース
(Reuse)
|
再使用 |
使用済みの製品を回収し適切な処置をする |
再使用、あるいは再使用可能な部品を利用する |
リサイクル
(Recycle)
|
再資源化 |
使用済みの製品や製造過程で発生した副産物を回収する |
原材料あるいは焼却熱のエネルギーとして利用する |
パソコンついては、排出事業者によって再生資源・再生部品の利用促進に取り組むことが求められています。また、メーカーが実施する回収・リサイクルなどの措置に協力することも必要とされます。
出典:e-Gov検索『資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律)』/経済産業省『資源有効利用促進法』『法律の対象となる業種・製品』
法人向けパソコンの廃棄方法
法人向けパソコンを廃棄する方法には、主に3つの選択肢があります。
①産業廃棄物処理事業者
1つ目は、産業廃棄物に関する収集運搬・処理の許可を自治体から受けている産業廃棄物処理事業者にパソコンの廃棄を依頼する方法です。
▼特徴
- 複数のメーカーのパソコンをまとめて廃棄できる
- パソコン以外の不用品の廃棄を同時に依頼できる
ただし、データの消去を必要とするパソコンの廃棄・処理には対応していない場合があるため、注意が必要です。
②リサイクル事業者
2つ目は、パソコンのリサイクルを専門とするリサイクル事業者に回収してもらう方法です。
▼特徴
- 複数のメーカーのパソコンをまとめて廃棄できる
- データの消去を依頼できる
データの消去を依頼する際は、リサイクル事業者のセキュリティポリシーを確認しておく必要があります。
③パソコンのメーカー
3つ目は、資源有効利用促進法に基づいて、廃棄するパソコンを製造したメーカーに回収を直接依頼する方法が挙げられます。
▼特徴
- 廃棄の方法やデータの消去に関する信頼性がある
- 廃棄に必要な工程をすべて任せられる
ただし、メーカーが異なるパソコンをまとめて廃棄する場合には個別に回収を依頼する必要があるため、時間と労力がかかりやすくなります。
法人がパソコンを廃棄する際のポイント
法人が業務に使用していたパソコンを廃棄する際には、情報漏えいや不法投棄、リース品の誤った処分などのトラブルを防ぐための対策が必要です。
①情報漏えいの対策を行う
パソコンを廃棄する際は、情報漏えいの対策を欠かさずに行う必要があります。
業務に使用したパソコンには、企業の機密情報や顧客の個人情報が記録されているため、事前にデータを消去しておくことが重要です。
▼情報漏えいの対策例
- 専用のソフトウェアを利用してデータを完全に消去する
- 企業ロゴや社内管理用のシールを除去する
パソコン上の操作でファイルを削除しただけでは、データは完全に消えません。データを完全に消去するには、専用のソフトウェアによる処理が必要です。
また、企業ロゴや社内管理用シールをパソコンに貼っている場合、処分の際に企業を特定されて情報漏えいにつながる可能性があります。
なお、パソコンのキッティングに関する課題については、こちらの記事で解説しています。
②会社情報が確実な事業者に依頼する
パソコンの廃棄は、会社情報が確実で社会的に信用できる事業者に依頼することが重要です。悪質な事業者に依頼してしまうと不法投棄につながり、委託側の責任が問われる可能性があります。
▼社会的に信用できる事業者を見極めるポイント
- 事業所の所在が確かである
- 過去の実績を確認できる
- 収集運搬・処理に必要な許可を受けている
- 産業廃棄物を扱う国家資格を取得している
③IT資産管理を行う
IT資産管理とは、法人が保有するパソコンやソフトウェア、IT関連機器などの使用状況を把握して管理することです。
廃棄するパソコンのなかには、自社の購入品ではなくリース品やレンタル品が含まれている可能性があります。日頃からIT資産管理を行っておくことで、リース品やレンタル品のパソコンを自社で誤って廃棄することを防げます。
また、管理台帳を用いてパソコンの購入日・使用期間・サポート期限などを把握しておくと、所在の分からないIT資産が発生するのを防げるほか、廃棄とリプレイスのタイミングを検討しやすくなります。
IT資産管理については、こちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
この記事では、法人向けパソコンの廃棄について以下の内容を解説しました。
- 法人向けパソコンの廃棄に関する規定
- 法人向けパソコンの廃棄方法
- 法人がパソコンを廃棄する際のポイント
法人向けのパソコンを廃棄する際は、産業廃棄物として処理するとともに、メーカーが実施する回収・リサイクルなどの措置に協力することが求められます。
情報漏えいや不法投棄、リース品の廃棄などのトラブルを防ぐためには、事前にデータの消去を行い、信用できる事業者を選ぶこと、日頃からIT資産管理を行っておくことが重要です。
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