IT内製化とは。取り組む際の3つのポイント
事業環境の変化に適応して競争優位性を確保するために、デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出または柔軟に改変するDX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みが推進されています。
しかし、DXの推進を妨げる課題の一つとして、ブラックボックス化した既存システムの存在があります。日本ではシステムの開発や運用を外部企業に委託するケースが多いことから、ブラックボックス化が起きやすいと考えられます。
このような課題を解消してDXによる変革を実現するために、ITの内製化を図る企業が見られています。
この記事では、ITを内製化するメリット・デメリットや実施のポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.ITの内製化とは
- 2.ITの内製化を行う対象
- 3.ITを内製化するメリット
- 4.ITを内製化するデメリット
- 5.ITの内製化に取り組むポイント
- 5.1.①社内でリスキリングを行う
- 5.2.②アジャイル開発を行う
- 5.3.③ITアウトソーシング(業務代行)と切り分ける
- 6.まとめ
ITの内製化とは
ITの内製化とは、システムの開発や運用を自社で行うことです。
国内の企業では、システムの開発や運用をベンダー企業に委託するケースが多く、すべてまたは一部を自社で対応している企業は約44%にとどまっています。
▼【各国比較】システム開発の内製化状況
システムの開発や運用をベンダー企業に依存している場合、以下の問題を招く可能性があります。
▼ベンダー企業に依存することによる問題
- 既存システムの全容を理解できず、刷新やカスタマイズを自社で行えない
- ベンダー企業が社風や業務内容を理解しきれず、機能が要望から逸れる
- システムの維持・保守運用を外部に委託するコストが増加する
- 部署単位で最適化されたシステムによりデータの利活用が限定的になる
- システム開発のノウハウ・技術が社内に蓄積されず、担い手不足によるトラブルが起こるリスクがある など
このようなブラックボックス化したレガシーシステムが存在すると、DXの推進が妨げられて将来的な経済損失を招くおそれもあります。
企業の課題・ニーズに応じたシステムを柔軟に開発・改修していくには、自社のスキルやリソースを活用してITの内製化を図ることが重要です。
出典:総務省『令和5年版 情報通信白書』『令和5年版 情報通信白書|データ集』
ITの内製化を行う対象
ITを内製化する対象には、主に社内システムの開発と保守運用の2つがあります。
▼IT内製化の対象
対象 |
概要 |
具体例 |
システム開発 |
社内システムを自社で開発・改修・カスタマイズすること |
経理システム
受注管理システムの開発 など
|
システム運用 |
社内システムの保守運用を自社で行うこと |
システムのメンテナンス
障害の復旧対応 など
|
なお、システム開発を担うシステムエンジニアについては、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
ITを内製化するメリット
ITの内製化を図ることで、システムの開発・運用が社内で完結でき、事業環境の変化や課題に応じた柔軟な対応が行えるようになります。
▼メリット
- ブラックボックス化の防止
- システム開発の迅速化
- ナレッジ・ノウハウの蓄積 など
自社でシステムの開発・運用を行うと、IT環境の全容を把握できるようになります。システムのブラックボックス化を防ぐことで、現場の課題・ニーズを踏まえて仕様変更や改修、カスタマイズなどを柔軟に実施できます。
また、ベンダー企業への依頼やスケジュール調整が不要になり、システム開発にかかる時間を短縮できる可能性もあります。
さらにシステムの開発や保守運用に関わるナレッジ・ノウハウが社内に蓄積されるため、社内のIT人材を育成できる環境となり持続的な成長につながります。
ITを内製化するデメリット
企業のリソース状況によっては、ITの内製化が難しい場合もあります。
▼デメリット
- 技術面でのハードルが高い
- IT人材を確保する必要がある など
システムの開発または保守運用を自社で対応するには、ITに関する専門的な知識と技術が求められます。
担当者のスキルレベルによっては、システムの管理や運用の品質が低下してしまう可能性があります。社内にエンジニアが居ない場合は、新たにIT人材を採用・育成するための期間と費用も必要です。
このように、システムの開発や保守運用に対応できるIT人材を自社で確保できない場合、すべてを内製化することは難しくなります。
また、限られた担当者で運用する場合には、対応が属人化したり、業務量が増加したりしてシステムの維持管理に支障をきたす可能性も考えられます。
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ITの内製化に取り組むポイント
ITの内製化を進めるには、社内で知識・ノウハウを蓄積したり、内製化と併せてITアウトソーシングを活用したりすることがポイントです。
①社内でリスキリングを行う
リスキリングとは、業務に必要な知識・技術を強化または新たに習得させる取り組みです。
システムの開発や保守運用を行うために必要な知識・技術を継続的に学べる場を提供することで、担当者のスキルを強化して内製化できる範囲を増やせるようになります。
▼リスキリングの取り組み例
- 社内で座学研修やOJTを実施する
- 社外の研修プログラムに参加させる
- eラーニングサービスを導入する
- 社内インターンシップや見習い制度を導入する など
なお、リスキリングに取り組むステップについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
②アジャイル開発を行う
アジャイル開発とは、システムに必要な機能を分割して、優先度の高い機能から小規模な開発を繰り返す開発方法です。
短期間でシステム開発のPDCAを回せることから、現場のニーズに沿った柔軟な機能追加や修正を行いやすくなるほか、開発期間の短縮につながります。
▼アジャイル開発を実施する際のポイント
- パッケージソフトウェアやクラウドサービスを活用して、システム開発の効率化と期間短縮を図る
- ベンダー企業とパットナーシップを結び、内製化のためのスキル育成や共創開発を行う
- マイクロサービスを活用してシステムの柔軟性・拡張性を高める
- 専用ツールを活用してテスト環境を自動化する など
③ITアウトソーシング(業務代行)と切り分ける
ITを内製化する部分とITアウトソーシング(業務代行)で外注する部分を切り分けて考えることも重要です。
ITを内製化するにあたって、必要な知識・技術を備えたIT人材を自社で確保して、システムの開発や保守運用をすべて社内で対応することは難しいといえます。
技術領域に応じて内製または外注する業務を切り分けることで、併走しながら効率的にITの内製化を進められるようになります。
▼ITアウトソーシングの活用例
業務や各部門の特性を踏まえたシステムを開発するために、設計については自社に理解がある担当者による内製化を図る。システムの移行支援や保守運用についてのみ外注する。
まとめ
この記事では、ITの内製化について以下の内容を解説しました。
- ITを内製化する重要性
- ITの内製化を行う対象
- ITを内製化するメリット・デメリット
- ITの内製化に取り組むポイント
ITを内製化すると、ブラックボックス化を防いで柔軟かつ迅速なシステム開発を行えるほか、社内にナレッジ・ノウハウが蓄積されて持続的な成長を図れます。
ただし、ITの内製化には専門的な知識・技術を有するIT人材と、システム開発や運用を自社で行うリソースが必要です。社内でリスキリングを行いスキルの強化を図るとともに、小規模かつ短期間でのシステム開発を行うアジャイル開発に取り組むことが有効です。
また、効率的に内製化を進めるには、ITアウトソーシングを活用して技術領域に応じて内製または外注する業務を切り分けることもポイントです。
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