ITインフラの構築とは。実施の流れや安全かつ円滑に運用するポイント
クラウドサービスの普及やAIの技術発展が進むなか、企業の事業活動においてITインフラは必要不可欠な存在となっています。
特に近年では、コロナ禍に伴うリモートワークの導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)(※)の取り組みが進められており、ITインフラの構築・運用に課題を持つ企業もいるのではないでしょうか。
この記事では、ITインフラの構成や運用形態、構築する流れ、円滑な運用を行うポイントについて解説します。
※デジタル技術やデータの利活用によってビジネスモデルの変革を図り、付加価値を創出することで競争優位性を確保する取り組み。
目次[非表示]
- 1.ITインフラの構築とは
- 2.ITインフラの運用形態
- 3.ITインフラを構築する流れ
- 3.1.➀要件定義(計画の策定)
- 3.2.②ITインフラの設計
- 3.3.③実装
- 3.4.④テスト
- 3.5.⑤現システムからの移行・運用
- 4.ITインフラを安全かつ円滑に運用するポイント
- 4.1.➀リスクを踏まえたセキュリティ対策を行う
- 4.2.②IT-BCPを策定・運用する
- 5.まとめ
ITインフラの構築とは
ITインフラの構築とは、システムやネットワークなどのIT基盤を整備することです。インフラは、“インフラストラクチャー(Infrastructure)”の略となり、“基盤”や“下部構造”といった意味があります。構築する領域によってさまざまな種類があり、そのうちITに関する施設・設備などの基盤を“ITインフラ”といいます。
企業が業務に用いるシステムやネットワーク環境はITインフラに該当しており、事業活動を継続するうえで重要な基盤となっています。
▼ITインフラの構成
構成要素 |
該当するもの |
ハードウェア |
ネットワーク・サーバ・パソコン・ストレージ など |
ソフトウェア |
OS・Webサーバ・アプリケーションサーバ・データベース・仮想化ソフトウェア など |
ITインフラの運用形態
ITインフラの運用形態は、大きくオンプレミス型とクラウド型に分けられます。
オンプレミス型は、社内に物理的なサーバを設置してITインフラを構築・運用する形態です。ITインフラに必要なリソースを自社で用意する必要がありますが、業務やニーズに合わせた自由な環境を構築できます。
一方のクラウド型は、クラウド事業者が提供するサーバ・ソフトウェア・ストレージなどのITサービスをインターネット経由で利用・運用する形態を指します。
ネットワーク上にあるサーバを介してアクセスできるため、インターネット環境があれば場所・端末を問わずITサービスを使用することが可能です。ただし、利用できる機能やカスタマイズの範囲はITサービスによって異なります。
▼オンプレミス型とクラウド型の比較
比較項目 |
オンプレミス型 |
クラウド型 |
リソースの調達 |
必要 |
不要 |
リソースの所在 |
自社の施設内 |
ネットワーク上 |
カスタマイズのしやすさ |
自由度が高い |
内容・範囲が限られる |
保守運用の対応 |
自社で対応 |
クラウド事業者で対応 |
コストのかかり方 |
設備投資/固定費の発生 |
従量課金制による月額利用料の支払い |
近年では、利便性の高さや保守運用の負担を削減できるなどの観点から、ITインフラをオンプレミス環境からクラウド環境へ移行する企業も見られています。
また、オンプレミス型とクラウド型を組み合わせて利用するハイブリッドクラウド型も増加しています。ハイブリッドクラウドでは、オンプレミス型のカスタマイズ性とクラウド性の利便性・運用性の高さの両方を生かすことができます。
ITインフラを構築する流れ
ITインフラを構築する際は、自社の目的・課題を踏まえたうえで必要な環境を一つひとつ整備していく必要があります。
ネットワークやシステムなどに関する専門的な知識・技術が求められるため、外部の専門会社によるサポートを受けることも一つの方法です。
➀要件定義(計画の策定)
ITインフラの運用形態や業務に必要な環境などを要件として定めます。自社の現状課題や目的を洗い出すことで、求められるITインフラの構造が見えてきます。
▼要件定義の際に検討する事項
- 運用形態(オンプレミス・クラウド)
- サーバの種類
- ハードウェアの内容・数量
- OSの種類
- システムに求める機能
- システムの監視体制 など
②ITインフラの設計
要件定義の内容に沿って、ネットワーク・ハードウェア・ソフトウェアといったITインフラの構造を具体化した設計書を作成します。
基本設計でITインフラの方針を定めてから、それぞれの構成要素ごとに必要な設備・機能・仕様などを定めた詳細設計を行います。
▼ITインフラの設計項目
- ネットワークアーキテクチャの設定
- サーバ・OS・ストレージ・アプリケーションの選定
- クラウドサービスの選定
- 可用性・冗長性・バックアップの設計
- セキュリティの設計 など
③実装
詳細な設計書に基づいて、ITインフラを実装します。
▼ITインフラを実装する際の作業
- ハードウェアの調達
- サーバの構築
- ネットワーク機器の設定
- ソフトウェアの購入、クラウドサービスの導入
- セキュリティ対策の設定 など
ITインフラを実装する際は、ネットワークの接続に問題がないか、システム間での連携がスムーズにできるかなどを確認して修正を行う必要があります。
④テスト
実装したネットワーク・サーバ・システムなどが正常に作動するかを確認するために、テストを実施します。ITインフラの構築プロセスで行われるテストは、3つの段階に分けられます。
▼テストの実施方法
種類 |
実施方法 |
単体テスト |
設備やシステムが設計の内容に沿っているか単独で検証する |
結合テスト |
複数の設備やシステムを連動させて干渉・不具合がないか検証する |
総合テスト |
本番を想定してITインフラ全体での動作を検証する |
設計書どおりに作動しない場合には修正を行います。
⑤現システムからの移行・運用
テストを経て、問題なく作動できることを確認できたら本稼働に移行して運用を開始します。移行後はシステムを安定して稼働させるために、常時ネットワークやサーバの監視を行い続けることが重要です。
ITインフラの構築を外注する場合については、こちらの記事で解説しています。
ITインフラを安全かつ円滑に運用するポイント
ITインフラを運用する際は、サイバー攻撃や自然災害などのインシデントが発生した場合に備えて、対策と復旧体制の整備を行うことがポイントです。
➀リスクを踏まえたセキュリティ対策を行う
ITインフラの運用時には、セキュリティ対策を行うことが重要です。
特にクラウドサービスの利用や外部から社内ネットワークにアクセスする場合には、ウイルスの侵入、不正アクセスなどのリスクがあります。
ITインフラの構成や運用方法によって必要なセキュリティ対策は異なるため、想定されるリスクを洗い出して対策法を選定することがポイントです。
▼ITインフラのセキュリティ対策例
- モバイル端末や記録媒体の持ち出し制限を設ける
- ウイルス対策ソフトウェアを導入する
- 外部ネットワークの境界にファイアウォールを設定する
- システムのID・パスワード管理やユーザー別のアクセス制限を行う
- ネットワークの監視・ログの取得を行う など
なお、ITインフラに求められるセキュリティ対策はこちらの記事で解説しています。
②IT-BCPを策定・運用する
IT-BCPとは、ネットワーク障害や自然災害が発生した場合に備えて、ITインフラの継続運用や迅速な復旧を行えるようにする計画のことです。
ITインフラが停止すると、業務を継続できなくなり事業活動に影響を及ぼすほか、復旧対応に時間を要すると大きな損害につながる可能性があります。万が一の際に、ITインフラの運用を継続または早期の復旧を行えるように対策をしておくことが欠かせません。
▼IT-BCPにおける対策の具体例
- 定期的にバックアップを実施する
- バックアップデータを安全な場所で保管・管理する
- サーバの冗長化(予備サーバの設置)を行う
- 緊急時の初動対応や復旧フローの策定を行う など
なお、バックアップについてはこちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、ITインフラについて以下の内容を解説しました。
- ITインフラの構成要素
- ITインフラの運用形態
- ITインフラを構築する流れ
- 安全かつ円滑に運用するポイント
ITインフラを構築する際は、自社の目的と現状課題を踏まえたうえで要件を定めるとともに、テストを行いながら設計内容に沿った環境を構築することがポイントです。また、安定した事業活動を行うには、セキュリティ対策や障害発生時に備えたIT-BCPの策定も重要といえます。
自社のみでITインフラの構築が難しい場合には、ITアウトソーシング(業務代行)によって外部のサポートを受けることも一つの方法です。
『FGLテクノソリューションズ』では、約20年にわたって蓄積した経験とノウハウを基に、ITインフラの構築や運用管理をはじめとする幅広い業務の代行を承っております。オンプレミス環境からクラウド環境への移行もお任せください。
詳しくは、こちらの資料をご確認ください。