
ライセンス管理とは? 重要性と効率化のポイント
※2025年10月7日更新
ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の進展によって、企業の業務にさまざまなソフトウェアが活用されるようになりました。ソフトウェアは、ユーザーと著作権を持つベンダーとの間で、使用許諾に関するライセンス契約を締結して利用することが一般的です。
ソフトウェアの利用にあたっては、ライセンスで許諾された条件や範囲を逸脱して使用することは認められません。また、ライセンス契約の継続中は使用料の支払いが発生するため、使用していないアカウントがある場合にはコストの損失につながる可能性があります。
ライセンス契約の違反やコストの損失を防ぐには、社内で導入しているソフトウェアの情報を管理することが重要です。
情報システム部門や管理部門の担当者のなかには「ソフトウェアが多岐にわたり、ライセンス管理が煩雑になっている」「ソフトウェアに関するコストを最適化したい」などとお悩みの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ライセンス管理の基本的な考え方と重要性、直面しがちな課題、管理の方法、さらに効率化のポイントについて解説します。
なお、社内システムのID管理についてはこちらの記事で解説しています。
目次[非表示]
- 1.ライセンス管理とは
- 2.ライセンス管理の重要性
- 2.1.ライセンス違反の防止
- 2.2.ライセンスコストの削減
- 3.ライセンス管理における課題
- 3.1.①ライセンス体系の複雑化
- 3.2.②ソフトウェア数の増加
- 3.3.③管理作業の属人化
- 4.ライセンスの管理方法
- 4.1.手動による管理
- 4.2.専用のライセンス管理ツール
- 5.ライセンス管理ツールの選び方
- 6.ライセンス管理の効率化を図るポイント
- 6.1.①管理対象と管理レベルを設定する
- 6.2.②IT資産管理ツールを導入する
- 6.3.③ITアウトソーシングを活用する
- 6.4.④定期的な監査と運用改善を行う
- 7.まとめ
ライセンス管理とは
ライセンス管理とは、社内業務に使用しているソフトウェアについて、ライセンス契約に則った適切な利用がなされるように管理することです。IT資産管理のうちの一つの業務に含まれます。管理するライセンスの種類は、主に2つに分けられます。
▼ライセンスの種類
- 永続ライセンス(買い切り型)
- 非永続ライセンス(サブスクリプション型)
サブスクリプション型には、完全月額制のほか、年契約月払いや年契約一括払い、複数年契約によるディスカウトなどの料金形態があります。
ライセンス管理の業務では、ライセンス台帳とライセンス関連部材台帳を作成して、ライセンス契約に関する情報を管理します。
▼ライセンスを管理する台帳の種類
台帳の種類 | 概要 | 主な管理項目 |
ライセンス台帳 | 利用しているソフトウェアを一覧で管理する台帳 |
|
ライセンス関連部材台帳 | ソフトウェアの付属物を管理する台帳 |
|
なお、IT資産管理についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
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ライセンス管理の重要性
ライセンス管理が適切に行われていない場合、ライセンス違反やコストの損失につながる可能性があります。このような問題を防ぐために、契約情報や運用状況を管理しておくことが重要です。
ライセンス違反の防止
ライセンス管理を行うと、ソフトウェアのライセンス契約に違反した運用が社内で行われることを防止できます。
▼ライセンス違反の例
- ライセンスの期限が切れた状態でソフトウェアを使い続ける
- ライセンスに定められた端末数の上限を超えてインストールする
- ライセンスに定められたユーザー数を超えて従業員で使いまわす
ソフトウェアのライセンス契約においては、ベンダー側にソフトウェアの使用状況に関する監査権が認められます。監査の際にライセンス違反が明らかになると、違約金が発生する場合があるため、注意が必要です。
また、クラウド環境でソフトウェアを稼働させた場合にライセンス違反になったり、契約更新を忘れたことで利用を停止されたりするリスクもあります。
ライセンスコストの削減
ライセンス管理によって契約情報を把握しておくと、社内で使用していないライセンスを把握してコストを削減することが可能です。
例えば、社内のある部署で追加購入が求められているライセンスが、ほかの部署では余っているようなケースがあります。社内で契約しているライセンスの種類やインストールしている台数を管理することで、ライセンスを不要に追加購入するコストを削減できます。
また、ソフトウェアによっては機能や価格、提供形態などが異なる複数のライセンスを提供している場合があります。社内にあるソフトウェアの運用状況を把握すると、各部署に必要なライセンスに切り替えてコストの調節を行うことが可能です。
ライセンス管理における課題
ライセンス管理の重要性を理解していても、実際の運用には多くの課題が伴います。代表的な3つの課題を見ていきましょう。
①ライセンス体系の複雑化
近年のソフトウェアは従来の買い切り型からサブスクリプション型へ移行しており、ユーザー数や利用機能に応じて課金される仕組みが一般的になっています。その結果、ライセンス体系が複雑化し、契約内容を正しく理解するのが難しくなっています。
特にクラウドサービスでは、ベンダーごとに異なる課金モデル(ユーザー単位・デバイス単位・従量課金)が存在し、契約内容を誤解するとコスト増につながる可能性があります。
②ソフトウェア数の増加
企業のIT環境では、業務効率化や部門独自のニーズに応じて次々と新しいソフトウェアが導入されています。その結果、管理対象のソフトウェアが増加し、全体像を把握するのが困難になります。
特にSaaSは導入が容易なため、現場が独自に契約を進めてしまう「シャドーIT」が発生しやすい点が問題です。IT部門が把握できていない契約が増えると、セキュリティリスクや無駄なコスト増加を招きます。
③管理作業の属人化
ライセンス管理をExcelなどの手動管理で行っている企業があり、特定の担当者だけが管理方法を把握している「属人化」が課題となります。担当者が異動や退職をすると、ライセンス状況が不透明になり、引き継ぎに大きな負担が生じることがあります。
また、更新期限や契約条件を見落とすと、ライセンス違反や余計なコスト負担につながるリスクもあります。
ライセンスの管理方法
ライセンスを適切に運用するためには、管理手法の選定が重要です。ここでは代表的な2つの方法を解説します。
手動による管理
企業が初期段階で採用しやすいのが、Excelやスプレッドシートを用いた手動管理です。導入コストが不要で、自由にカスタマイズできる点がメリットです。
具体的には、以下の情報を一覧化して管理します。
- 契約ベンダー名
- 契約形態(買い切り型・サブスクリプション型)
- ライセンス数
- 利用者名
- 契約開始日・更新日
この方法は、小規模な組織や利用ソフトウェアの数が限られている場合に有効です。しかし、ライセンス数が増えるにつれて管理が煩雑になり、更新漏れや記録ミスのリスクが高まります。さらに、担当者に依存しやすく属人化が進む点も課題の一つです。
したがって、手動管理は「初期導入段階」や「小規模運用」に向いた方法であり、中長期的には自動化やツール導入を検討する必要があります。
専用のライセンス管理ツール
次のステップとして検討されるのが、ライセンス管理専用ツールの導入です。これらのツールは、自動的にソフトウェアのインストール状況や利用状況を収集し、ライセンスの有効期限や利用数を可視化できます。代表的な機能は以下のとおりです。
▼ライセンス管理ツールの機能
- 自動スキャンによるソフトウェア検出
- 契約状況と利用状況の照合
- 更新期限アラート
- 監査レポート出力
- 退社によるユーザーの無効化・削除
- ライセンスの解除
これにより、更新漏れやライセンス違反を防ぎやすくなり、管理者の負担を軽減できます。また、監査時に必要な情報をスピーディに提出できる点も大きなメリットです。
ただし、ツールによって機能範囲や費用が大きく異なるため、自社の利用規模や目的に応じて選定することが重要です。
ライセンス管理ツールの選び方
ライセンス管理ツールを導入する際には、「無料ツール」と「有料ツール」の比較が重要です。ツールの種類等によって異なりますが、以下のような違いがあります。
無料ツールはコストを抑えられる反面、管理の精度や自動化には限界があります。逆に有料ツールは投資が必要ですが、コンプライアンス対応や効率化の観点で中長期的に大きな効果をもたらします。
特に、外部監査に対応する必要がある企業や、数百以上のライセンスを運用している企業は、有料ツールの導入がおすすめです。
ライセンス管理の効率化を図るポイント
ライセンス管理を行う際には、ライセンスの利用形態や使用状況、使用期限などのさまざまな情報を管理する必要があります。
部署または業務によって異なるソフトウェアが使用されている場合には、台帳の作成や棚卸し、更新作業などに労力がかかりやすくなります。
効率的にライセンス管理を行うには、ライセンス情報の管理体制や管理方法の見直しを検討することが重要です。
①管理対象と管理レベルを設定する
ライセンス管理を行う際には、管理対象と管理レベルを設定する必要があります。
社内にあるソフトウェアの種類が多岐にわたる場合、最初からすべてのライセンスを資産として管理することは難しくなります。監査の有無や価格などを踏まえて、管理対象とするソフトウェアの優先順位を決めることがポイントです。
▼ライセンスの管理対象
- ソフトウェアがインストールされているIT機器
- ソフトウェアを利用している部署
また、ライセンスの管理対象ごとに、棚卸しの頻度や作業工程の粒度などの管理レベルを設定しておくことで、限られたリソースで効率的なライセンス管理を行いやすくなります。
②IT資産管理ツールを導入する
IT資産管理ツールを導入すると、ライセンス管理に必要な情報を一元管理して、台帳の作成や棚卸しなどにかかる時間と労力を削減できるようになります。
紙媒体の台帳で管理していた情報を一元管理できるため、社内の各部署で複数のソフトウェアが使用されている場合にも、管理者が契約情報や使用状況を一つの画面で把握することが可能です。
ただし、ライセンスの詳細な情報については自動で収集できないケースもあり、専門知識を持った管理者が手動で入力・管理する必要があります。
▼IT資産管理ツールで自動収集できない情報の例
- セカンドライセンスの有無
- ダウングレード権 など
③ITアウトソーシングを活用する
社内でライセンス管理を行える専門知識を持った管理者を確保するのが難しい場合には、ITアウトソーシングを活用することも一つの方法です。
ITアウトソーシングを活用することで、以下のメリットが期待できます。
▼ライセンス管理に関するITアウトソーシングのメリット
- 専門知識を持ったプロにライセンス管理を任せられる
- 自社の情報システム部門がコア業務に集中できるようになる
- 新たな人員を採用・教育するコストを抑えられる可能性がある
ITアウトソーシングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
④定期的な監査と運用改善を行う
ライセンス管理は「一度整備すれば終わり」ではありません。定期的に棚卸しを行い、契約状況と利用状況を突き合わせることが大切です。
利用していないライセンスを洗い出して解約したり、契約プランを見直したりすることで、最適化された状態を維持できます。
まとめ
この記事では、ライセンス管理について以下の内容を解説しました。
- ライセンス管理の重要性
- ライセンス管理における課題
- ライセンスの種類と管理方法
- ライセンス管理ツールの選び方
- ライセンス管理の効率化を図るポイント
ソフトウェアのライセンスは、使用許諾に関するライセンス契約に則って使用することが求められます。ライセンス違反やコストの損失、更新忘れによる利用停止などの問題を防ぐには、契約情報・使用状況などを管理することが重要です。
紙媒体の管理台帳やIT資産ツールを用いて管理する方法がありますが、いずれもライセンス管理に関する専門的な知識が必要になります。「自社で管理者を確保するのが難しい」「ライセンス管理の運用負担が大きい」という場合には、ITアウトソーシングの活用が有効です。
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