IT投資とは。効果的にデジタル技術を取り入れて企業競争力を高めるには
デジタル技術の導入は、生産性の向上や柔軟な働き方の実現、人手不足の解消などのさまざまなメリットをもたらすと期待されます。
また近年では、DX(トランスフォーメーション)が推進されています。デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革によって、新たな付加価値の創出を図ることが経営課題の一つとして挙げられています。
デジタル技術の導入やDXの推進に取り組むには、経営戦略に基づいて積極的なIT投資を行うことが重要です。
この記事では、IT投資の概要や目的、企業における取り組み例、IT投資を効果的に実施するポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.IT投資とは
- 2.企業におけるIT投資の現状
- 3.企業がIT投資を行う目的
- 3.1.➀2025年の崖への対応
- 3.2.②競争力の維持・強化
- 3.3.③人手不足の解消
- 4.企業におけるIT投資の取り組み例
- 4.1.➀業務プロセスの省人化・自動化
- 4.2.②ITインフラの最適化
- 4.3.③ゼロトラストの導入
- 5.IT投資を検討する際のポイント
- 6.まとめ
IT投資とは
IT投資とは、新たなデジタル技術を取り入れるためのITシステムや施設環境の整備、人材の確保などに資金を投入する活動を指します。
受発注システムや経理システムを導入する方法のほか、IT人材の育成・採用によってデジタル化を推進する方法などがあります。
デジタル技術が目まぐるしく進歩するなか、企業が積極的なIT投資を行うことは、持続的かつ安定した経営基盤を整備して市場の競争力を高めるうえで重要な取り組みといえます。
企業におけるIT投資の現状
総務省の『令和6年版 情報通信白書』によると、国内の民間企業によるIT投資は長期的に見て増加傾向にあります。なかでも“ソフトウェア(受託開発・パッケージソフト)”は、設備投資全体の6割近くを占めています。
▼国内におけるIT投資(情報化投資)の推移
画像引用元:総務省『令和6年版 情報通信白書』
一方で、企業におけるIT投資の割合をみると、現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)に予算の約8割が割かれている状況です。
▼企業におけるIT投資の割合
画像引用元:経済産業省『DXレポート2.2』
このように企業の多くが“守りのIT投資”にとどまっており、新たなビジネスモデルの構築や付加価値の創出に向けた“攻めのIT投資”は十分に進んでいません。
攻めのIT投資が進まない原因には、複雑化・老朽化・ブラックボックス化したレガシーシステムが残っており、従来の運用体制に依存していることが考えられます。
出典:総務省『令和6年版 情報通信白書』『令和3年版 情報通信白書』/経済産業省『DXレポート』『DXレポート2.2』
企業がIT投資を行う目的
企業が行うIT投資には、デジタル技術を活用して競争力の強化や経営課題の解決につなげる目的があります。具体的には以下の3つが挙げられます。
➀2025年の崖への対応
IT投資の目的に、2025年の崖に対応してDXを推進することが挙げられます。
経済産業省が2018年に発表した『DXレポート』では、レガシーシステムが残存することで生じるリスクにより、2025年以降に最大12兆円の経済損失が発生すると予想されています。この問題が“2025年の崖”と呼ばれています。
▼レガシーシステムの残存によって生じるリスク
- 保守・メンテナンスコストの増大
- 既存システムの運用保守を担うIT人材の不足によるセキュリティ事故やシステムトラブルの発生
- データの利活用が進まないことによる市場競争力の低下 など
2025年の崖に対応するには、レガシーシステムを刷新してデータの利活用や保守運用の標準化などを行えるITインフラを構築することが必要です。
なお、2025年の崖についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
②競争力の維持・強化
企業の競争力を維持・強化することもIT投資の目的といえます。
世界規模でデジタル化が進むなか、日本は海外と比べて推進が遅れています。総務省の『令和6年版 情報通信白書』によると、デジタル化に関する取り組みについて大企業の約25%、中小企業の約70%が未実施と回答しています。
▼デジタル化の取り組み状況
画像引用元:総務省『令和6年版 情報通信白書』
デジタル時代において企業が競争力を維持するには、デジタル化やデータの活用を通じて新規事業の創出、顧客体験の創出・向上などに取り組むことが重要といえます。
出典:総務省『令和6年版 情報通信白書』
③人手不足の解消
IT投資によってデジタル技術を積極的に取り入れることは、企業の人手不足を解消する手がかりにもなります。
クラウドやAIなどのデジタル技術を活用すると、業務を効率化したり、人が行ってきた作業を自動化したりすることが可能です。
なかでも近年登場した生成AIは、人間にしかできない創造的な作業を行えることから、資料・文書作成やプログラム開発などの幅広い業務の効率化に役立つと期待されています。
生成AIの活用方法についてはこちらの記事をご確認ください。
企業におけるIT投資の取り組み例
ここからは、企業による具体的なIT投資の取り組みを紹介します。
➀業務プロセスの省人化・自動化
ITシステムやAI、ロボットなどを導入して、業務プロセスの省人化・自動化を行う方法があります。少ない人員で効率的に業務を遂行できるようになると、人手不足の解消や生産性の向上につながります。
▼IT投資の取り組み例
IT投資の対象 |
できること |
ワークフローシステム |
申請・承認業務をオンラインで完結する |
グループウェア |
チームメンバーでタスク・スケジュールの管理やファイルの共有・共同作業を行う |
RPAツール |
データの入力・集計などの定型作業を自動化する |
AIチャットボット |
社内ヘルプデスクやカスタマーサービスを自動化する |
IoT |
製造・建設現場にある設備の稼働データを取得して、常時監視や異常検知を行う |
②ITインフラの最適化
オフィスや施設において安定かつ快適な業務環境を整備するために、ITインフラの最適化を図る取り組みです。
事業の内容に応じてITリソースを柔軟に活用したり、データを一元管理できる仕組みを整えたりすることで、運用プロセスの効率化や保守・メンテナンスに関するコストの削減などを図れます。
▼IT投資の取り組み例
- サーバの仮想化
- クラウド基盤へのシステム・データの移行
- 統合運用管理ツールによるITインフラの一元管理 など
なお、ITインフラのクラウド化についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
③ゼロトラストの導入
ゼロトラストセキュリティとは、社内・社外におけるネットワークの境界にとらわれず、“すべてを信用しない”ことを前提としたセキュリティ対策の考え方です。
セキュリティ上のインシデントが発生すると、システムの停止によって事業継続が困難になったり、重要なデータが漏えいしたりするリスクがあります。
ITインフラに対して網羅的なセキュリティ対策を行うことで、安全で持続的な運用が可能になります。
▼IT投資の取り組み例
- マルウェア対策ソフトウェアの導入
- ファイアウォールの設置
- ID・パスワード管理ツールの導入
- バックアップの強化・見直し など
なお、ITインフラに求められるセキュリティ対策についてはこちらの記事で解説しています。
IT投資を検討する際のポイント
限られた資金のなかで効果的なIT投資を行うには、自社の成長や付加価値創出につながる“攻めの投資”を重点化することが重要です。
▼ポイント
- 現状の課題を洗い出す
- 将来の経営ビジョンを明確にする
- ITアウトソーシング(業務代行)を活用する
IT投資を行う際には、既存システムや業務に関する課題を可視化して、経営戦略を踏まえて将来の経営ビジョンを明確にすることがポイントです。課題と目標のギャップを明らかにすることで、IT投資の対象や優先順位を見極められます。
また、既存システムの運用・保守に多くの資金・人材を投入しており、IT投資にまでリソースを割くことが困難なケースもあると考えられます。情報システム部門・管理部門が行っているノンコア業務をITアウトソーシングによって外部委託することで、自社のIT人材がIT投資戦略に注力できるようになります。
ITアウトソーシングについては、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、企業のIT投資について以下の内容を解説しました。
- IT投資の現状
- IT投資を行う目的
- IT投資の取り組み例
- IT投資を進める際のポイント
企業の成長や競争力の強化を目指すには、デジタル技術を取り入れるためのIT投資を積極的に行い、ビジネスモデルの変革につなげることが重要といえます。
IT投資を行う際には、現状課題と経営ビジョンとのギャップを明らかにして、自社の成長や付加価値創出につながるIT投資戦略を立てることがポイントです。
また、既存のシステム運用に負担がかかり、IT投資のための資金・人材を十分に投入することが難しい場合には、ITアウトソーシングの活用も有効です。
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