IT人材不足への対策にどう取り組む? 原因を踏まえた3つの施策
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や先端技術の進展によって、ITに関する専門知識・技術を持つ人材の需要がますます高まっています。
一方で、多くの企業でIT人材の量が不足しているほか、求められる技術の水準が上がっていることから質の面でも人材が不足している状況となっています。
企業の情報システム部門や管理部門では、「IT人材が不足する背景とは」「IT人材の不足を解消するためにどのような取り組みが必要なのか」と悩まれている方もいるのではないでしょうか。この記事では、IT人材が不足している主な原因と対策について解説します。
目次[非表示]
- 1.IT人材不足の原因
- 1.1.少子高齢化による生産年齢人口の減少
- 1.2.デジタル技術の進歩
- 1.3.労働環境へのイメージ
- 1.4.IT需要の増加
- 1.5.業務の分業化に伴うスキルの分散化
- 2.IT人材不足への対策に取り組むには
- 2.1.①採用方法と採用基準を見直す
- 2.2.②自社でIT人材を育成する
- 2.3.③IT人材への待遇を改善する
- 3.まとめ
IT人材不足の原因
IT人材の不足は、さまざまな原因が重なって招いている問題と考えられます。考えられる原因には、以下が挙げられます。
少子高齢化による生産年齢人口の減少
内閣府が発表した『令和5年版 高齢者社会白書』では、国内における少子高齢化の進行に伴って生産年齢人口(※)が減少していることが報告されています。
▼生産年齢人口の推移と将来推計
画像引用元:内閣府『令和5年版 高齢社会白書(全体版)』
IT業界においても例外ではなく、生産年齢人口の減少の影響を受けて人材不足につながっていると考えられます。
※生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の、生産活動の中心となる人口のこと
出典:内閣府『令和5年版高齢社会白書(全体版)』
デジタル技術の進歩
デジタル技術の進歩が早いIT業界では、時代の変化によってこれまで習得した知識・スキルが業務に生かせなくなる可能性があります。
特に近年では、高度なICTスキルやアジャイル開発などに対応できる人材が求められています。スキルアップをしていない状態では、求められるIT知識や技術を満たせなくなり、質の面でIT人材が不足することが考えられます。
労働環境へのイメージ
労働環境へのイメージもIT人材が不足する原因の一つと考えられます。
IT業界は長時間労働になりやすく、業務による過重な負担が懸念されています。2022年度の『過労死等の労災補償状況』によると、脳・心臓疾患の労災支給決定件数が多い業種として、情報サービス業や情報処理・通信技術者が挙げられています。
このような過重な労働環境から、既存のIT人材が離職に至ったり、IT業界を目指す人が少なくなったりすると考えられます。
出典:厚生労働省『別添資料1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況』
IT需要の増加
近年では、IT市場の拡大が進んでIT人材の需要が増加しています。
経済産業省の『人材開発分野をめぐる状況の変化』によると、IT人材の需要は2030年には158万人に増加する一方で、供給は113万人になると見込まれており、需給ギャップは45万人にも及ぶといわれています。
▼IT人材需給ギャップの試算結果
画像引用元:厚生労働省『人材開発分野をめぐる状況の変化』
今後もIT人材の需要が高まると予測されるなか、IT人材の供給が追いつかなくなり、人手不足に陥る企業がさらに増えると考えられます。
出典:厚生労働省『人材開発分野をめぐる状況の変化』
業務の分業化に伴うスキルの分散化
IT分野に関わる業務が分業化されたことで、それぞれの要件を満たす人材の確保が難しくなっている可能性も考えられます。
従来では、サーバ・ネットワークの構築から運用に至るまで、すべて一人で担当しているケースが一般的でした。しかし、過重労働による労働環境の悪化やイメージの低下などの問題が生じたことで、業務負担を軽減するために担当範囲を細分化する改善策が講じられました。
▼業務を分業化する例
- サーバやネットワークの構築のみを担当する部門
- 運用保守のみを行う部門 など
分業化によって従業員の業務負担は軽減されましたが、ジェネラリストやスペシャリストではなく、作業者ベースのIT人材が増える結果となりました。各業務で人材を確保しないと運用が成り立たない環境となり、人材不足につながっているケースがあります。
IT人材不足への対策に取り組むには
企業がIT人材不足の問題に対応するには、新しい人材の確保をはじめ、既存人材の育成や定着化を図ることが重要です。
具体的な取り組みには、以下が挙げられます。
①採用方法と採用基準を見直す
幅広いIT人材を確保できるように、採用方法や採用基準を見直す方法があります。
IT人材として募集する要件を緩和して対象者を拡大させたり、これまでターゲットとしていなかった人材を含めたりすることで、新しい人材を確保できる可能性があります。
▼IT人材を確保するために見直すポイント
- 採用年齢を引き上げる
- 外国籍のエンジニアを積極的に採用する
- 未経験者の採用枠を拡大する
- 正社員のみにこだわらず、多様な雇用契約形態で採用ハードルを下げる
ただし、要件を緩和することによってスキルのミスマッチが発生する可能性があります。要件を緩和する際は、応募者のスキルが自社に適切かどうか、より慎重に判断することが重要です。
②自社でIT人材を育成する
IT人材の不足を補うために、自社の非IT人材を育成して技術職への転換を行う方法があります。
時代のニーズに対応できるIT人材を確保するには、既存のIT人材に対して先端技術を習得する機会を設けることが重要です。育成方法には、以下が挙げられます。
▼IT人材育成の方法
- 社内での座学やOJTを実施する
- 社外研修の実施する
- eラーニングを導入する
なお、IT人材の育成についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
IT人材を育成するには? 必要なスキルとリスキリングに取り組む4つのステップ
③IT人材への待遇を改善する
新たな人材の採用を促進して、現在いるIT人材の定着化を図るために、よりよい待遇に見直すことも重要です。
IT人材の待遇について改善を図ることで、働きがい・働きやすさの向上につながり、求職者の増加や離職の防止につながると期待できます。また、ワークバランスを維持できる労働環境を整えると、多様な人材を採用しやすくなります。
▼待遇改善の方法
- ITに関する資格取得者に手当を付与して、資格取得への意欲を高める
- 人事評価の項目や基準を見直して能力に応じた報酬を付与する
- 多様かつ柔軟な働き方を導入してワークライフバランスを確保する
まとめ
この記事では、IT人材不足への対策について以下の内容を解説しました。
- IT人材が不足する原因
- IT人材不足への対策
IT人材の不足は、少子高齢化やデジタル技術の進歩、IT需要の増加、労働環境のイメージ、業務の分業化などのさまざま原因が重なって起きていると考えられます。
問題を解決するには、採用方法・基準の見直しを行ったり、育成環境や待遇の改善を図ったりして、新たな人材の採用と定着化につなげることが重要です。また、人材採用や育成に充てる労力・時間を確保することが難しい企業では、ITアウトソーシングを活用する方法もあります。
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